準決勝でマークした53秒76は今季の世界ランキング6位に相当し、メダルも狙える位置にいるそうだ。
選手寿命の短いスイマーの5度目の五輪出場は、素人目にも驚異的に映る。
しかも、トーレス選手の場合、2度も現役を引退している。
一度目は、17歳で1984年のロサンゼルス五輪に初出場し、1988年のソウルと1992年のバルセロナ五輪に出場した後だ。
この時、トーレス選手は25歳。当時の女子選手としては標準的な引退年齢だ。
しかし、33歳になった2000年のシドニー五輪で現役復帰した。
理由は「五輪で個人のメダルが欲しい」との理由だ。
ロス、ソウル、バルセロナの3大会で金メダルを含む4つのメダルを獲得しているが、すべてリレー種目でのメダル獲得だった。
シドニーでは、現役復帰の動機付けとなった「個人のメダル」を銅メダル3個はもちろん、加えてリレー種目で金メダル2個を獲得した。
そして2度目の引退をする。
今回の現役復帰までの道のりは、2006年に長女を出産し、キャスターなどをして充実した生活を送っていた。
しかし、出場したマスターズの大会で、現役トップレベルの記録が出たことから、40代での五輪出場への意欲がわいたという。
しかも、2度目の現役復帰の場となった2007年の全米選手権の50メートルと100メートルの自由形で優勝するし、今大会の100メートル自由形準決勝でマークした記録は自己ベストだという。
40歳を過ぎてからの驚異的な記録に、世間ではドーピングを疑われることもあるそうである、全くのデマのようだ。
それにしても、この気力はどこから来るのだろう。
レベルは違うが、個人的にも仕事をしていて、体力的だけでない、精神的な衰えを感じることがある。
30代前半までは、連夜で徹夜して無茶して仕上げた仕事の記憶が山ほどあるが、今では「とりあえず、今週の他の仕事に影響が出ないよう、まずは寝てから考えよう」となる。
中央公論社の元常務で50歳を過ぎてからデビューした、私の大好きな紀行作家の故宮脇俊三氏は、著作の中で「“この俺が書かずして誰が書く”という作品や“死んでも死に切れない”という作品であれば、作品を書くための気力を保つ動機付けになるが、私の書く鉄道の紀行文はそんなレベルじゃない。だからサボらないように編集者にその都度、叱咤激励を含めたチェックを入れてもらう仕組みにした」という趣旨の事を言われていた。
つまり「作品を書く気力を保つ機会と動機の仕組み」を設定したのだ。
ダラ・トーレス選手の活躍で「肉体年齢」「精神年齢」などこれまで常識とされてきたスポーツ科学の概念がより研究されていくだろう。
「肉体は精神が統括している」をまさに示した事例だからだ。
もちろん、ベースには、凡人とは違う並外れた肉体と精神があるからだろうけれど「機会と動機付け」の仕組みがなければこの快挙はなかっただろう。
トーレス選手と学年で同期になる私としては、レベルは違うにせよ、こうなる「機会と動機付け」は研究し、見習うべきことがたくさんあると感じた次第である。
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