“スポーツギア ”という言葉をご存知だろうか?
スポーツギアとは「一流アスリートがプレーするために必要不可欠な道具」のことで、この道具が、最近では、科学的に分析された高性能なものになっており、道具の性能によって勝負を左右する度合いが大きくなっている。

最近有名な代表的な事例としては、競泳の水着であろう。
各メディアで報道されているように、スピード社のレイザー・レイサーは、水の抵抗を極力抑え、0.3ミリと極薄の伸縮性の少ないポリウレタンの生地で身体を締め付け、水の中で理想的な抵抗の少ないフォームを維持する。
しかも、どうも着用することで浮力も出てくるようだ。

6月22日付の読売新聞では、専門家の意見として、水泳の速さは、
1)理想的なフォームを水中で取ることで抵抗を抑え、推進力を増す
2)筋肉を鍛えて、推進力を増す
と言うことにより実現できるそうだ。
つまり、選手は「早く泳ぐ」ために、「理想的なフォームを追求し、それとともに筋力を鍛えて技術を磨いている」わけだ。
しかし、道具の開発・進化(レイザー・レイサー)により、1)の技術を高める努力は、「道具」がある程度カバーしてくれることになった。

そうなると、一流アスリートがその中の頂点に立つためには、2)の技術を高めることになる。
しかし、悲しいことに、2)については、先天的な要素が強い。
つまり、後天的に鍛え上げられる肉体は「努力勝負」であるが、もともとの恵まれた体躯は人種によって大きな差異がある。
要は、先天的な体躯のハンデを、後天的努力でカバーできる肉体改造と理想的なフォーム作りという「技術」でカバーして、勝利してきた日本選手にとって、「道具の進化」は酷なことなのである。

他のスポーツでは、たとえば、スピードスケートでは、かつては「コーナリング」という技術が勝敗の分け目になっていたが、「コーナリング時に大きく減速せずにカーブを曲がる事ができるスラップスケートの開発」によってまるで日本選手が勝てなくなった。
これなどは、後天的技術要素よりも、先天的体格差が勝負の大きな要素になっていることを示していると思う。

私は、学生時代にボウガン射撃(英文名はクロスボウ)という標的に当たる点数で競う競技スポーツに取り組んでいたが、「道具の性能の差」と言うものを思い知らされた。
どういうことかというと、当時国内大会では、ほぼ1社の弓具しか使用されていなかった。
しかし、世界大会に参加するなどして海外の状況がわかると、性能の良い弓具を使用する選手が増えた。
すると、1週間前まで同じぐらいの点数しか出なかった選手が、性能の良い海外の弓具を使用した途端に全日本選手権で優勝争いができる点数をたたき出すようになったのだ。

それまで、「理にかなった美しいフォーム」や「筋トレ」を第一優先して練習をしてきたのに、筋トレが大キライな選手が道具を変えたら急に一流選手のスコアである。
つまり、これまで信じてきたものが、一気に崩れた。
「これって、なんなんだろうなぁ」と思った。

ボウガン射撃の場合は、世界的にも、道具以前に「選手自体が後天的に努力する伸びしろ」がまだまだ勝敗に左右する世界であるが、オリンピック競技のような「ギリギリの勝負」をしている世界では、スポーツギアが究極まで進化すると「最終的には肉体の優位性の差が勝敗の差」になる。
すると、日本人としては、つまらんなぁ、と思うのである。

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