2008年6月8日の競泳・ジャパンオープンの男子200m平泳ぎで世界新記録(2分7秒51:従来記録は2分8秒50)を樹立した北島康介選手が「泳ぐのは自分だ」とTシャツに書いてアピールしていた。
今シーズン、スピード社のレイサーレイザーを着た選手が続々と世界記録を達成している現実からすれば、マスメディアや世間が水着ばかりに注目するのは仕方がないが、日々厳しい練習を積んでいる選手達からすれば、「水着じゃなくて選手に注目して欲しい」と切に願う気持ちが沸くのは当然だろう。

6月8日のスポーツうるぐす(江川卓氏がキャスター)を見ていたら、この番組では、そのような北島選手の心情を察してか、番組での扱いを「水着による変化」と「泳ぎによる変化」(ストローク数の変化(アテネ69回、2008年4月の代表選考会64回、ジャパンオープン61回)に分けて紹介していた。
水着については、北島選手は「水の中ですっと行く感じ」「疲れがでない」というようなことを口にしていたから、その効果は明確なのだろう。

その他の選手のレイザーレイサー着用の反応を聞いていると、「水をはじく」など、生地の水の抵抗が少ないことが話題になりやすいが、水着による身体の締め付け効果も大きいようだ。
つまり、締め付けにより「泳ぎ後半になっても疲れにくい」「泳いでいる時の身体の軸がぶれない」という効果が出ているようだ。
しかし、各選手とも「自分たちがどのようにして選手生活を維持する事ができているのか」ということを十分に熟知しているから、「オリンピックではレイザーレイサーを着用します」とはどうも公言しにくいようだ。
例えば、北島選手はミズノと長年契約しているし、松田選手はミズノの契約社員だ。金銭的にも多大なサポートをしてもらっているから、ツライ立場だと思う。

それにしても、今回のような「道具の進化」による記録の驚異的な向上はいつの時代にもある。
記憶が新しいところでは、アルペンスキーのカービングスキー、スピードスケートのスラップスケートである。
「道具の進化」は残酷だ。なぜならば、それまでの競技スタイルの概念を変えてしまうからだ。
例えば、長野オリンピックを翌年に控えた1997年に出現したスラップスケートにより、コーナーで如何にスピードを落とさずに滑るかが大きな技術的要素だったのに、多くの選手がスラップスケートで難なく従来以上のコーナリング技術をマスターした。
したがって、コーナリング技術に抜群の優位性を持っていた堀井学選手(1996年にはワールドカップ500m総合優勝、1000mで世界記録樹立をしている)は並みの選手に成り下がってしまった。

しかし、今回のレイザーレイサーは、概ねどの選手が着用してもタイムが伸びている。
つまり「道具の進化」により、今まで積み上げて着実に構築してきた理想の泳ぎの概念を変えてしまう残酷さは少ないようだ。
恐らく、「疲労軽減」「少ない水の抵抗」などどの選手にとっても共通的な課題を解決してくれる「道具の進化」なのだろう。
となると、北京本番では「体調」「精神面」をどうやってピークに持っていくかが勝負となる。

それにしても、メディアはあまり取り上げないか、その中においてアテネ五輪の女子800m自由形で金メダルを獲得した柴田亜衣選手ひとりだけがどうも記録が伸びていない。
今回のジャパンオープンは北京に向けての調整過程であるとはいえ、他の選手の結果を勘案すると心配だ。

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