日本経済新聞のスポーツ面でコラムを持っている野球評論家の豊田泰光氏が、同紙のコラムで『人を動かす演説』と題して「今日本に言葉で人を動かせる政治家がいるかとなると、思い当たらない」「野球の監督業も同じで、日本人監督に言葉で誰かを動かせる人が少なくなったようだ」という趣旨の事を書かれていた。

豊田泰光氏自身の経験で忘れられない演説は、
1)西鉄ライオンズ時代の三原脩監督の
「今日は負けていい。じっくり相手を見なさい」
2)水戸商業高校の校長(当時)
  「あと10回」
だそうだ。

三原監督の言葉は1956年の巨人との日本シリーズ第一戦の試合直前の後楽園球場(当時の巨人のホームグラウンド)のロッカールームでの言葉だそうだ。
当時の状況を整理すると、
・三原監督は以前に巨人の監督を追われて西鉄に移った
・巨人は当時の野球界において絶対的な強豪球団であった
・巨人の選手は高齢化(川上哲治選手、別所毅彦投手など)が進んでいた
・西鉄は若手選手(豊田泰光選手、中西太選手、稲尾和久投手など)が多い
などであった。
つまり、三原監督の「今日は負けていい。じっくり相手を見なさい」は「血気盛んな若手が多い西鉄が、相手の戦力や戦況を冷静に判断せずに闇雲に戦ったら、相手に飲まれてシリーズが終わってしまう」というのを悟ったのだろう。

水戸商業の監督の『あと10回』は、豊田氏が甲子園での高校野球で選手宣誓を引き当てた時に「選手宣誓を100回練習した後」の言葉だった。
当時高校球児の豊田選手は4番で主将、怖いもの知らずだ。
しかし、豊田さんも述懐しているように「次は選手宣誓です」のアナウンスが聞こえたあとは全く記憶に残っていないそうだ。
つまり「慢心」を見抜いた校長先生が「あと10回」の選手宣誓の練習をさせることで、当日は極度の緊張状態になっても「無意識のうちにせりふが出る」ようにさせたのだろう。

このことから、心に響く演説は、
・手短でかつ、インパクトのあるフレーズであること
・自分が言いたいことより、聞き手の胸中を読みきること
であるようだ。

つまり『ことばで人を動かす』ためには「聞く力」や「想像力」がなければ、相手の心に芯から響かず、効果がないのだ。
ここのところ、講演会をする機会が多い私であるが、振り返ると「自分が伝えたいこと」が先行していて、大いに反省してしまうのである。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカルシンキングのススメ メルマガ70号より)

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