小笠原良知や、その他、いろいろ考察 -2ページ目

小笠原良知や、その他、いろいろ考察

小笠原良知や、その他、いろいろ考察

そこで人々が例えば数学や電磁気現象に於ける+と-との対立に特別な興味を有つのは自然である。併しながら大事なことは対象に於けるこのような自然弁証法的対立は、常にかの歴史性の見地から理解されなければならぬということである。正数と負数との単なる対立はそれ自身としては少しも弁証法を構成しない、ただ正数が負数にまで、――歴史的に[#「歴史的に」に傍点]――拡張されたという、この歴史性をその経歴としてこそ、正数と負数とは弁証法的であることが出来る。この例を並列関係に引き直すためには、物質の引力と斥力との交互作用が例として引用されても好い。電気や磁気ならば、+が-に、-が+に成る[#「成る」に傍点]例として、引用されるべきである。勿論歴史的な・即ち一方向を指し示す・運動を並列的な交互関係に引き直すのだから、そこでは多少とも歴史性が忘れられ勝ちなのは尤もである。かくて自然的事物のもつ弁証法的対立は往々にして初めから全く非歴史的[#「非歴史的」に傍点]なものを意味するかのようにも見える。自然弁証法に対する不信の重大な原因の一つが茲に横たわる。実際かかる関係を自然弁証法の誇るべき特色であるかのように主張するならば、弁証法は単なる言葉[#「言葉」に傍点]となるのであり、それは弁証法の俗流化にしかならないだろう。