言の葉シリーズ。今回は大好きな小説からです。
「この世には不思議なことなど何もないのだよ、関口君」。
京極夏彦さんの百鬼夜行シリーズ、主人公・京極堂こと中禅寺秋彦の決め台詞です。
一見すると、この世には不思議なことなどなく、
すべては科学的論理的に説明が着くという意味に捉えられがちな言葉なのですが、
実はそうではありません。
京極さんはこう解説しています。
「僕の小説に『世の中に不思議なことは何もない』というセリフが必ず出てくるんです。
それは、よく読んでもらうとわかるんですが、近代合理主義的発言じゃないんです。
世の中というのは、もともと全部不思議なものなんだから、
全部不思議なんだと思えば、不思議なものなんかないという意味なんです。」
「『百物語評判』という江戸の本があるんですけど、
その本は当時の最新の知識を使って、百物語の妖怪を論じるという本なんです。
その作者(山岡元隣)がなかなか粋な人で、
『世に不思議なし、世すべて不思議なり』と言うんです。
これは僕がすごく好きな言葉で、まさにそうだと思うわけです。」
「不思議だということがわからなければ、不思議じゃないですよね。
いまおっしゃったように、赤ん坊のときには・・・・・・。」
(「ゲゲゲの鬼太郎 解体新書」水木しげる 京極夏彦著)
世の中の起こることは、すべて不思議なこと。
全部不思議なことなんだから、取り立てて不思議なことなどはない、とこう仰ってるのです。
「世に不思議なし、世すべて不思議なり」。
まさにその通りだと思います。完全に納得してしまいました。
「言葉が通る。この男は言の葉で場をさらう」
「京極道の思わせ振りな台詞に馴れていない降旗は一発で堕ちた。
拝み屋の常套手段である」(「狂骨の夢」)
さすがは京極さんです。私も完全に堕とされました(笑)。