依頼人(24)見えないものが見えている | IGOSHI・WALKER’s THIS IS ME =井越歩夢は書く語る=

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井越歩夢(IGOSHI・WALKER)

ライトノベル作家・ブログ小説家・AI生成イラスト・AI生成文書技師

そんなこの私のつらつらと思うまま徒然なるままに何か何かを書く語る場所である


霊カウンセラー

黄泉野カレンは悪気を捌く
依頼人(24)見えないものが見えている

 

クラウンビクトリアを運転するアイラ。彼女の車以外ではタクシーくらいにしか乗らない私なのだが、今日はそれ以外の車に乗り、それ以外のドライバーと共にある場所に向かっている。

 

今日車を運転するのは私の若い友人、真城ナミちゃん。そして車はレンタカーのトヨタヤリス。

 

思ってみれば小さな車に乗るのは初めてかもしれない。

小さな車なのだが、何というかまあまあ快適だ。少し硬い乗り心地ではあるのだが、不快ではなくしっかりしているという印象の硬さ。大きさからしてみたら、それはまあ小さい分狭い。それでもその狭さも不快に感じさせない。乗せてもらっている感覚として、まあまあ悪くは無い。いい感じだ。

 

ただ一つ、ハンドルを握っているナミちゃんの1年という短めの運転経験だけ少々心配ではあったのだが。

だがしかし、それも余計な心配だった。彼女は軽快に車を操り、今日の目的地に向かって私たちを乗せたヤリスはナミちゃんの運転に合わせるように軽快に走っている。

 

私は黄泉野カレン。某国某都某市駅前でヨミノカウンセリング室を営んでいる心理カウンセラーだ。

今日は私の元依頼者であり、現在は私の若い友人、市内の大学に通う女子大生真城ナミちゃんの誘いで車で4時間ほど走った先にあるアミューズメント施設「ハイランドパーク」へと車を走らせている。

 

目的地であるハイランドパークは、世界一の高さ、落差、速さを誇るコースター、最速172km/hを誇るコースター、総回転数世界一のコースター、最大落下角度121度のコースターなどのアトラクションなど絶叫マシーン系好きにはたまらない天国のような場所、そして絶叫マシーンを苦手とする私にとってはそれはまさに、言葉は悪いのだが地獄のような場所と言っても過言ではない。

だが先日、エンタメとアトラクションについて一人考察した夜、もしかすると苦手だったホラー映画を克服できたように、体験することで絶叫マシーンも克服し、苦手を転じさせ楽しめるようになるかもしれない。そんな思いから私は、彼女の、ナミちゃんの唐突の誘いに乗った。

 

まあ、その結果は最後に語るとしてだ。

 

まあその結果は最後に語るとして、この道中。私たちは、不可解な出来事に遭遇し、そして私は一人の人物と出会うこととなった。

 

不可解な出来事。それは移動中の高速道路上で起こった。

まあいつもそういう機能のついていない車に乗せてもらっているため知らなかったのだが、現代の車は何だかよく話しかけてくる。

道案内、速度看板、そして・・・・

 

ピピピピピ

 

その音は、その不意打ち気味に発生したその音には、私もナミちゃんも驚かされた。

その音は、衝突軽減装置の警告音。まあ、それ自体の存在は知ってはいたのだが、普段それのついている車に乗せてもらっていないため実際作動するところを体験するのは今これが初めてだった。ただ、一つおかしなこと。それは、何もない、前に車も何もいないその状況の中でそれが警告音を発したことに、私たちは驚かされていた。

 

「びっくりしましたねー」

「う、うん。初めてこの音を聞いたなぁ。」

「そうなんですね。カレンさん。」

「ええ、友達の車、古い車だからこういう機能ついていないのよね。」

 

まあびっくりはしたのだが、当然前には何もいないし何かにぶつかるというわけではない。

警告音には驚いたのだが、そんな会話で済む程度の話だ。

 

「そういえば、こんな話を聞いたことあるのですけど、何もないところでこの音の鳴るときは、実は見えない何かを車が感じて警告を鳴らす、とか言うらしいですよ。」

「見えない物って、おばけ?」

「はい、カレンさんの苦手なおばけさんです。」

「うわぁ・・・」

ナミちゃんは冗談っぽくそう言い笑いながら運転を続けている。ふふふ。それはこの間の一件で克服済みだよ、と私は心の中でそう呟きながら、そしてそれを感じながら彼女に、ナミちゃんには何も悟られないようそのまま楽しいドライブを続けた。

 

「ナミちゃん、次のパーキングで休憩いいかな?煙草吸いたい。」

「いいですよー。じゃあ私も何か飲み物買ってきます。」

 

カーナビの示す次のパーキングエリアまでの距離はあと10Kmほど。その間は・・・私たち「3人」か。

 

「話はこの後聞いてあげるから、今は静かにそこに座っていなさい。」

私は、ナミちゃんには聞こえない言葉を使って彼へそう伝えた。

 

次のパーキングエリア、大黒川パーキングエリアで休憩を取ることに、いや煙草という理由をつけて、パーキングエリアに止まる流れを作り、私は喫煙場へ。そしてナミちゃんは飲み物を買いに売店へとそれぞれ向かった。

まあ、私はそこにあそこで乗車してきた「彼」を連れていくことになるのだが。

 

「まったく、せっかく可愛い女の子とデート中なのに。」

「まさか僕のこと、見える人に出会えるなんて。」

「それより何であれ飛び出しはいけません。」

「すみません、なかなか気づいてもらえなくてつい。」

 

見るからに、その服装、その印象から彼はバイク乗りと見て取れた。

年齢は・・・まあ20代後半から30代前半と言ったところじゃないかという印象のまあまあ一言で好青年という見た目。

「気づいてもらえなくてつい、車の前に飛び出して警報を鳴らさせたのですね。」

「そうです、すみません。驚かしてしまったようで。」

「当然です。普通何もないところであの警報が鳴れば誰だって何?何??と思いますよ。驚いて急ブレーキを踏んだら追突事故なんてこともあるかもしれません。それが目的ではないでしょう。」

私は、煙草に火を付けながらため息交じりの紫煙を吐いた。

「貴方のお話の感じから、貴方は自身のことを理解していると思っています。それは間違いないですか?」

「・・・はい。」

そうか。理解していながらそうであるということは、彼は何か心残りを残してあの場にいたということだろう。

そして、彼は多分自分の存在に気付いてほしいという一心からそういう行動をしていたのだろう。

「あの、警報という話、今の車には何かそういう物ついているんですか?」

なるほど、彼はあそこにかなり前、数年、いや十数年前からあそこにいて、そして気付いてもらえるよう何やらをしていたのか。

「現在の車には衝突軽減装置というものが付いてます。その警報が鳴ったのですよ。ただ、貴方の理解している通り貴方の姿は人には見えません。稀に見える人も居るにはいるのですがそれは稀なことです。」

「それじゃあ、あなたは僕のことが見えるんですね。」

「そうでなければ声をかけていませんし、今こうして貴方と会話をしていません。そういうことです。」

そう言って、私はまたフーっと煙草を一息。そして、ポケットから名刺入れを取り出した。

「少し距離はありますけど、ここまで来ることは出来ますか?。」

私の名刺を渡すと彼は、へぇ、というそんな表情をしていた。

「カウンセラーさんなのですね。僕が見えているからてっきり霊能者と思っていました。」

「私は霊能者ではありません。カウンセラーです。よろしければ後日、ここでお話を聞くこともできます。いかがされますか?」

まあ、見える人という時点で大概言われる霊能者と思っていたというその言葉。まあ、見えるのだから仕方ないと思っているのだが・・・まあ仕方ないか。名刺を見ながら彼は少し考えている様子だった。

「今日はダメですか?」

「今日は私の休日です。休日はしっかり休む主義なので。それに・・・」

「あ、かわいい彼女さんとデート中でしたね。」

「そういうことです。」

「わかりました。何かすみませんお邪魔しちゃって。そうしたら・・・・明後日、水曜日の夜でもいいですか?」

「いいですよ。水曜の2時。お待ちしています。それと、気持ちはわからないでもないのですが無暗に気づいてもらおうと飛び出さないように。先ほども言いましたけど、今の車には衝突軽減装置が付いています。貴方、大半の人には見えていませんけど、車には、衝突軽減装置には見えているということです。」

最後の一息を吐き、私は煙草の火を消した。

「それでは、水曜夜、お待ちしています。」

私はそう言い残し、その場から駐車場に向かって足を進めた。彼は静かにそれを見送ってくれた。

せっかくナミちゃんと遊びに出かけているのに、ついてこられたらそれはいい迷惑だ。まあ、ここは見送ってくれたということで良しとしよう。

 

 

ナミちゃんは飲み物を買って先に車に戻っていた。

「ナミちゃんお待たせ。」

「いえいえー、カレンさんジャスミンティーでよかったですよね?」

「え、ありがとう。」

彼女は私の分の飲み物も買ってきてくれていた。いつも私の部屋に遊びに来るときの手土産と言い、こんな時も何かと気の利く子だな、そんなことを思いながら車に乗り込みそして私たちはハイランドパークへ向けてのドライブを再開した。

 

それにしても、

 

「そういえば、こんな話を聞いたことあるのですけど、何もないところでこの音の鳴るときは、実は見えない何かを車が感じて警告を鳴らす、とか言うらしいですよ。」

「見えない物って、おばけ?」

「はい、カレンさんの苦手なおばけさんです。」

 

あの会話、まさかまさかと思っていたのだが、実は本当に現代の車にはどうやら人には見えないものが見えているようだ。

不幸中の幸い?と言っていいかはどうか、だがまあ、今日出会った彼は、悪意を持たないただ気付いてほしいそれだけの存在であったということは、まあまあ不幸中の幸いと言ってもいいだろう。

 

だが、彼のようにただ気付いてほしいだけの存在にこれから否応なく気付く人は増えていくことだろう。

見える見えないは別としてだ。

 

悪意なくただ気付いてほしいだけ、それだけで心霊的説話、都市伝説にされてしまう彼らもまあ・・・不幸ね。

 

さて、この日記の最後に大事なことを報告しなければならない。

 

ハイランドパークには、世界一の高さ、落差、速さを誇るコースター、最速172km/hを誇るコースター、総回転数世界一のコースター、最大落下角度121度のコースターなどのアトラクションなど絶叫マシーン系好きにはたまらない天国のような場所、そして絶叫マシーンを苦手とする私にとってはそれはまさに、言葉は悪いのだが地獄のような場所と言っても過言ではない。

だが先日、エンタメとアトラクションについて一人考察した夜、もしかすると苦手だったホラー映画を克服できたように、体験することで絶叫マシーンも克服し、苦手を転じさせ楽しめるようになるかもしれない。そんな思いから私は、彼女の、ナミちゃんの唐突の誘いに乗った。

 

そしてその結果は「これは無理だった・・・・」

 

 

ヨミノカウンセリング室

某都某市駅前

13時〜20時(メールにて要予約)

定休日 毎週月曜火曜

カウンセラー 黄泉野カレン

 


 

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 6月27日(木)投稿予定