依頼人(13)楽しい休日と考察する恐怖の法則 | IGOSHI・WALKER’s THIS IS ME =井越歩夢は書く語る=

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井越歩夢(IGOSHI・WALKER)49歳

ライトノベル作家・ブログ小説家・AI生成イラスト・AI生成文書技師

そんなこの私のつらつらと思うまま徒然なるままに何か何かを書く語る場所である


霊カウンセラー

黄泉野カレンは悪気を捌く
依頼人(13)楽しい休日と考察する恐怖の法則

彼女を見送った後、もう一度今日彼女と二人で過ごした、その中で見ていた映画のことについて振り返り始めた私なのだが、すぐに私は振り返るのをやめた。

何故ならそれはもう一回だけで、一回彼女に詳しく説明されてそれを聞いたそれだけで十分理解していたし、何より何度も思い返す、振り返るものでもない。

物語の中に組み込まれた法則。そう、あれは法則なのだ。見る者をその世界に惹き込み、そして言いしれぬ恐怖を体験させる、そのための法則。

これを私は「恐怖の法則」として記憶の中に落とし込むことにした。

 

私は黄泉野カレン。某国某都某市駅前でヨミノカウンセリング室を営む心理カウンセラーだ。毎週水曜から日曜まで13時から20時まで、カウンセラーとして仕事をし、そして時に日曜から水曜以外の深夜2時から3時までカウンセラーとして仕事をしている。

まあまあ、ただこれだけを見ればおかしな話に見えることは明らかではある。それはもう理解している。理解しているのだが説明しなければならないだろう。

ここまで私の38の日記を追ってきた方ならもうすでに知っていることなので飛ばしてもらってもいい。私の依頼人は「昼」と「夜」「生者」と「死者」。深夜の時間は夜の依頼者「死者」からの依頼に対応している時間だ。

だがしかし、一つとても大事な事なので話しておかなければならない。ここまで読めば私は「霊能者」なのだと思われるだろう。だがしかし、私は霊能者ではない。あくまで私は心理カウンセラー。大事な事なのでもう一度。私は心理カウンセラーだ。

 

さて、話を戻そう。今日は火曜日。火曜日の昼。休日の昼という今、私は来客と二人である映画を見ていた。それは・・・私の苦手な映画「ホラー映画」だ。そしてそれを私に勧め一緒に見ようと勢いよく押しかけたのは、私の若い友人、いずれ私の助手になりたいと心理学を勉強している20歳の友人、真城ナミちゃんだ。

まあまあ、映画は・・・まあまあ・・・怖い。ああ怖い。苦手なものは苦手だ。仕方ないじゃないか。その映画を見る私の姿をナミちゃんはニコニコと何がしか思いを込めた笑みを浮かべながら見ている。いや、私じゃなく映画を見なさいと言いたいところではあったのだが・・・私はというと一言分かりやすく表現すれば「固まっていた」。

 

 

「固まっていましたね、カレンさん。」

 

 

「固まってましたか?ナミちゃん。」

 

映画を見終わった私たちは、私の淹れたコーヒーとナミちゃんの買ってきた甘いドーナッツを頂きながらそんな言葉からの会話を始めた。

ナミちゃんは様々なジャンルの映画を見ることを趣味にしているようなのだが、その映画を見る目線に彼女は独特の特徴を持っていた。

彼女はその作品のその物語の流れを見ることはもちろん、その作品その映画のジャンルそれぞれにある、それぞれの独特な手法を凝らされた作品の世界への引き込み方、惹き込み方、それを分析することを彼女は楽しみの一つとしているのだ。

「ナミちゃん、ホラー映画にもやっぱり引き込みの法則のようなものはあるの?」

「もちろんです!ホラー映画には怖がらせるための恐怖の法則があるんですよ!」

恐怖の法則?今日見たこの映画にも、このホラー映画にもそういうものがあるということなのだろうか。私は彼女の言った「恐怖の法則」という言葉に何かこう、妙に興味を持っていた。

「今日の映画にもそれはあるの?」

「ありましたよー。いろいろと。」

そうか、そうだったのだな。そうするともしかしてこの法則を知れば私は今後ホラー映画を苦手なものからその怖がらせの技術を楽しみながら鑑賞できるようになるのではないか?さらに私の興味はナミちゃんの言う「恐怖の法則」という言葉に惹かれていった。

「それじゃあ、映画大好きナミ先生、私にその恐怖の法則をご教示いただけますか?」

私は高まる好奇心を彼女の綺麗な瞳に私のメガネ越しの黒い瞳を合わせ投げかけた。彼女は一瞬豆鉄砲を受けたように、驚いたような顔をしたのだが、すぐにその表情は微笑みに変わり、そして得意げに、フフフ、と、とても得意げに言ったのだった。

「でわ、カレンさん。これから私、真城ナミがこれからカレン先生にたくさんのホラー映画を見てもらって、より一層ホラー映画を楽しめるようホラー映画における恐怖の法則の講義を始めますね。」

「よろしくおねがいします。ナミ先生。」

そんな掛け合いにお互い笑い合い、そして彼女の授業は「ホラー映画における恐怖の法則」の授業始まった。

 


 

私は真城ナミ。某国某都の某市にある某大学に通う女子大生です。今日は私の恩人であり、私の師匠!と言ってもなかなか弟子にしてもらえないのですけど、それは置いておいて!心理カウンセラーの黄泉野カレン先生のマンションに遊びにきています。

さてさてまず最初に、普段は知的でクールな眼鏡美女のカレン先生は一つ意外な弱点を持っています。なんとそれは「ホラー映画が大の苦手」なのです。

そして、今日はついさっきまでそんなカレンさんと私おすすめのホラー映画を見ていました。はい。私の無茶振り的にカレン先生にこの映画を見させました!どや!

そしてそれを見終わった後、カレンさんから「この映画にも引き込みの法則はあるの?」と聞かれましたので、この私、真城ナミがカレン先生にホラー映画の中にある怖がらせる見せ方、魅せ方、「恐怖の法則」を解説することになったのです!

私がカレンさんに授業!突然そう振られましたけど大丈夫!っと・・・さて、でわ授業を始めます。

 

まず最初にこれは、私真城ナミの持論で一般論ではない・・・と思うので、そこについてはご了承おねがいします!

 

結論「ホラー映画における恐怖の法則(真城ナミ理論)」とは私たち人類の進化の歴史上怖いと感じる物、者、状態、状況、を絶妙の間を入れて物語の中に映像として組み込み見せること。

 

私たち人間の怖いと感じるもの。深層心理のなかで恐怖を覚えるもの。それは私たちが原始人の頃から今に至るまでの「これは危ない!いますぐ逃げろ!」という過去に刻まれた長い歴史上の経験それらの総まとめと考えます。例えば、暗闇、狭い部屋、動くはずのないものが動く、あったものが突然消えた、なかったものが突然そこに現れたという予期せぬ物事、今聞こえる音は不快だ、何かいる!逃げろ!などなど。

そう言うものを映像として作り出してそれを絶妙の間合わせをして見せることこそが怖さの演出です。

 

「例えばカレンさん、これから私の言う状況を目を閉じて想像してみてください。」

「う、うん。」

カレンさんは手を両膝の上に置き私の言う通り目を閉じている。

「カレンさんは今部屋の中にいます。あ、部屋の電気が消えて真っ暗になりました・・・何も見えません・・・」

私はここで秒速ほどの速さで10を数えてカレンさんに

「はい、明かりがついたので目を開けてください。」

「はい、わぁ!!」

机を挟んで向かい合っていた私は、この10を数える間にカレンさんと鼻をくっ付けるほどまで顔を近づけていた。目を閉じて真っ暗から目を開けた瞬間に、机の会向かいだった私の顔のドドドアップにカレンさんは目を開けた瞬間思わず椅子から落ちるような勢いで体を後ろに退け反らせた。

「ちょっと、ナミちゃん!」

「ふふふ、びっくりしたでしょう。これ、映画の中にもありましたよね。絶妙な間と不協和音の後突然アップで出てくるお化け。これは一例ですけどこんな感じなのですよ。」

本当にびっくりした様子で眼鏡も少しズレちゃってるカレンさん。そのズレた眼鏡の向こうの、

「あ・・・・」

その時、その勢いで少しズレたカレンさんの眼鏡向こうの裸眼を私は見ていた。眼鏡越しに見ていたカレンさんの綺麗な黒い瞳のはずの目は・・・

「な、なるほどね。ほんとびっくりした。もう、ナミちゃんそんなに驚かさないでよ。」

少し怒った素振りをしながら眼鏡のずれを直して私にそう言ったカレンさん。でも私は、予期していなかったそれに戸惑い、今度は私の方が固まってしまった。

「・・・ナミちゃん?」

「あ、ど、どうでした?びっくりしました?」

「もう、とーってもビックリしました。」

カレンさんはそう言って椅子に座り直し、そして私の方に微笑みながら綺麗な黒い瞳を向けた。うん、黒い瞳。きっとあれは私の見間違いよね。

「突然目と鼻の先にいなかった私が、明るくなった瞬間にそこにいた、という感じでしたけどビックリしましたよね。これも怖がらせる見せ方の手法の一つです。他には〜」

「な、ナミちゃん、このあとは実例なしでお願い。びっくりするから。」

「あ、はーい!」

カレンさんってホンットに怖いの苦手なんだ。なのにどうして「心霊カウンセラー」なんて言われているんだろ?本当に見えていたらホラー映画なんて全然怖くないと思うし、あれはただの噂よね。そんなことを思いながら続けて私はカレンさんにそのほかの法則の話を続けていった。そうして30分ほど私の、真城ナミの「ホラー映画における恐怖の法則」の講義は続いたのでした。

 

女子大生真城ナミの講義、終わり。

 


 

彼女との、私の若い友人真城ナミちゃんとの会話はいつも楽しい。彼女は私に今の20代前半を教えてくれる先生だ。まあ、今日は役2時間のホラーな体験というおまけ付きではあったのだが、まあまあそれも映画大好き真城ナミ先生の「私のホラー映画における恐く見せるための法則」聞くことができ、そしてそれを踏まえた上でホラー映画を見たとしたら、もしかすると今までの「ドキッとする」感覚ではなく「分析する目」で冷静に見られるかも知れない。

 

それにしても、ナミちゃんから話を聞けば聞くほど、なるほどよくできているものだと感じる。

そういう意味では私の好きな「サメ映画」にも法則というか見ていると何となく気がつくお約束のようなものがある。

今度一度一人でホラー映画を見てみよう。今の私であれば、ナミちゃんの講義を受け恐怖の法則を知った今の私なら、ホラー映画をまた一つ違う目線で、きっと今度は固まることなく、楽しめるかもしれない。

 

「おじゃましましたー。また遊びに来ますね。カレンさん。」

「ええ。またいらっしゃい。ナミちゃん。」

17時。私は彼女を見送りそしてソファーに座り今日のことをふと思い返していた。

その中で見ていた映画のことについて振り返り始めた私なのだが、すぐに私は振り返るのをやめた。

何故ならそれはもう一回だけで、一回彼女に詳しく説明されてそれを聞いたそれだけで十分理解していたし、何より何度も思い返す、振り返るものでもない。

 

だって、怖いから。

 

物語の中に組み込まれた、それは法則。そう、法則なのだ。見る者をその世界に惹き込み、そして言いしれぬ恐怖を体験させる、そのための法則。

これを私は「恐怖の法則」として日記に書き留め、記憶の中に落とし込むことにした。

 

そして私はもしかしてと引っ掛かっていることを思い返した。

すぐに直したとは言えズレたそれを直す僅かな間、ナミちゃんの表情に一瞬、ほんの一瞬驚きととれるそれを私は見ていた。

そして、もしかして、もしかすると見られてしまったかもしれないな、と。

 

ヨミノカウンセリング室

某都某市駅前

13時〜20時(メールにて要予約)

定休日 毎週月曜火曜

カウンセラー 黄泉野カレン

 


 

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黄泉野カレンは悪気を捌く

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 4月11日(木)投稿予定