依頼人(11)控えめに言って耳福 | IGOSHI・WALKER’s THIS IS ME =井越歩夢は書く語る=

IGOSHI・WALKER’s THIS IS ME =井越歩夢は書く語る=

  
井越歩夢(IGOSHI・WALKER)

ライトノベル作家・ブログ小説家・AI生成イラスト・AI生成文書技師

そんなこの私のつらつらと思うまま徒然なるままに何か何かを書く語る場所である


霊カウンセラー

黄泉野カレンは悪気を捌く
依頼人(11)控えめに言って耳福

昨日はまあまあ、おせっかい・・・いや、出会いサポート?に休日の半分を使ったのだが今日は、火曜日は、私の定休日である火曜日は何も予定を入れていない日。休日。そう、今日は休日。本当の意味での私の休日だ。

予定はない。予定はないのだが、予定のないからこそ私だけの時間を過ごす。明日から始まる仕事に向けての心の英気を養うために。

 

私は黄泉野カレン。某国某都某市駅前でヨミノカウンセリング室を営む心理カウンセラーだ。

定休日は月曜と火曜。そして今日は火曜。

昨日は休みだった。だが、約束があった。彼女に会う約束。そしてそんな彼女の話を聞き、彼女の望みを叶えること、そして以前依頼を受けた彼に彼女を紹介すること。二人を出会わせること。休日ではあった。だがしかし、私たちは人々の暮らしに人界の出来事に潮流に強く干渉しないことを仲間の中で取り決めている。だがしかし、放って置けない気持ちになることもある。

それが、昨日の私の行動であり、おせっかいであり、放っておきたくない気持ちだった。

そして1日は、月曜日という休日の半分以上はそれそのことに時間を投入し、私の休みは半分仕事?のような気分で終わった。

そしてそして今日の1日は、私は私に私の本当の休日を感じさせ、与え、そして明日への英気を養う大切な日なのである。

朝起きて、シャワーを浴びつつ洗濯、着替え、新聞に目を通しつつ朝食、掃除はルンバにお願いして・・・今日は普段であれば一日部屋でゆっくりするのだが、先日覚えた「図書館からスタバルートの読書時間」に今日は乗っかろうと今私は新聞を読みながら図書館の開館時間を、9時30分をゆっくりと待っていた。

 

9時30分。その時間を確認した私は、市立図書館貸出カードを持ってることを確認し外に出かける準備をする。天気は生憎の小雨。まあ、雨は嫌いではない。だが今日の移動は徒歩である私にとっては少しだけ気分を削がれる天気でもある。

まあまあ・・・それはそれとして、だ。

図書館はマンションの直近である。その間傘は必要なさそうだ。私は折り畳み傘をバックにいれてそして図書館に向かった。

図書館ではあまり時間を使わない。いつも通りその日その時私自身の目についたこれという本を1冊手にとる・・・のだが、手に取ったその本「骨の髄まで武藤敬司ラストメッセージ」プロレスに興味があるとかそういう話ではなく、先日と同じく背表紙のタイトルで思わず手に取っていた一冊、それがこれだった。「骨の髄まで」というタイトル、それが目についてこれを手に取っていた。きっと今私の隣に友人梛木ミコトがいたらきっとこう言うだろう。「どうしてそれを手に取ったの?」と。まあまあその時はそれがこれだったという話をするだけなのだが。

私はそれを、その1冊を借りて図書館の外に出た。この間10分。雨はまだ小雨。これならここから5分もあれば着けるスターバックスまでは傘無しでも良さそうだ。

 

スターバックスコーヒーによく足を運ぶようになったのは、昨年の12月頃だったと記憶している。それまでは、時々、よほど気が向いた時に行く程度だったこの場所に、昨年のその頃から少なくとも月に1回は、普段であれば週に1回は足を運びドリップコーヒー(トール)を飲みつつ30分ほどゆっくりとした時間を過ごさせていただいている。

ここは本を読むにも、仕事の時はカウンセリング室を開ける前の午前中に依頼メールの確認をするにも丁度いい騒めきがある。それに気づき、そこが好きになった。

そして今日は何だか、そう、何を切掛にそう思いそうしたのかは言葉として、文字として、表すことはできないのだが、

「キャラメルマキアート、グランデでお願いします。」

そう私は言っていた。それに対応してくれた女性店員さんはにこりと微笑み、

「今日は甘いものの気分ですか?」

「ええ。そうですね。」

どうやら顔を覚えられるほどにはここに通っているのだなと私はその言葉で自覚し、そして微笑みながら彼女にそう言葉を送った。

 

 

 

 

ほっと一息。まずは、窓側の席に座りほっと一息だ。雨の勢いは少し強くなり始め、サワサワとその音を僅かながら店内に流している。うん、悪くはない。これもBGMとして悪くはない。平日午前。今日は、今の時間なりにお客様も疎ら。雑談というBGMはそれほどそれほど聞こえてはこない。そんな中、私はキャラメルマキアートを一口頂いて、そして図書館で借りたその本をゆっくりと読み始めた。丁度その時だ。丁度その時、入店した身長の高い2人組の男性に私の視線はふと移っていた。

背の高い・・・うん、一目でわかる。外国の方だ。彼らは外国語で軽い雑談をしつつ入店しレジカウンターへ注文を・・・

(何?すごい響きのいい、いい声なのですけど)

その声の響きは、読書をする私の手を止めるのに十分すぎるものだった。そして彼らの注文に女性店員さんも流暢な外国語で応対している。その対話はまるで3人組のボーカルの歌うハーモニーのように私の耳に流れてきている。

私はしばし本を閉じ、その流れる言葉、良い響きに耳をすませて・・いや、耳に福を感じさせて頂いていた。

 

彼ら2人は私の座る窓側から少し奥側に離れた席に座った。2人ともコーヒーとサンドウィッチ。朝食に来たのだろうか。いや、きっとそうなのだろう。それにしても、なんていい声。なんていい響きを奏るのだろう。控えめに言って惚れ惚れする。彼らの会話は、次の行き先についてという何気ない内容だった。何故私に解るか。私もその外国語を読み聞き話しできるからだ。だがその内容などどうでもいい。そう、どうでもいいのだ。私は一度本を閉じ、店内のBGM、店外から僅かに聞こえる雨音、そして彼ら2人のいい響きの声をMIXしたBGMを彼らが店を出るその時間まで楽しむことにした。

20分ほどで彼らは席を立ち、次の目的地「都内」へと向かう準備のため宿泊先に戻って行った。そして私は最初に席に腰を下ろした時と同じように、ほっと一息。いい「ほっ」という一息を吐いて目を閉じ彼らの声をもう一度脳内再生させた。

時にただ話しているだけでその会話を歌のように感じさせる人。心地よい声を持った人の存在を確認するのだが、そのたびに思う。控えめに言って耳に福と。それを言葉で説明はできない。これは言葉にできない感覚だ。言葉にできない感覚を言葉にすると・・・それが陳腐になると私は勝手に思っているからこれを言葉に、文字に、文にしない・・・・何だろう。店内に入って多分45分ほど。本を読み始めてそれほど経っていない。だがしかし、私は何だかもう今という時間を満足してしまっていた。本はまた読めばいい。返却期限は来週まであるのだから。

私は本をバックに入れて、空になったカップを片付けそしてマンションに向かってこの店を後にした。

 

部屋に帰り、そしてまた私はほっと一息吐いた。そして今日の今まで、ここまでの出来事に心の眼を寄せてみた。いや、昨日と今日、今のここまでのそれを思っていた。

彼と彼女、そして借りた本、歌の様に耳に心地いい声。まあまあ、1日休みの少ない週という決まったことを、まあまあまあまあ帳消しにするよい時間を過ごせたのではないか。そう、それでいい。私自身それをすべて肯定してしまえばそれは私自身すべて良いことと私にできる。全肯定。私の好きな言葉だ。

 

いつも聞いているのとは違う言語で聞くいい響きの声。いつも人の悩みを聞く耳にそれは控えめに言って耳の幸せだった。

前述のとおり今週は休みが1日だけになるのだが、何だか明日からまた頑張ろうというそんな気持ちを強く感じ、それが強く押し寄せそして湧いてくる。

ありがとう彼女と彼と店員さんと2人組の外人さん。

さあ、明日からまた頑張っていきましょう。

 

ヨミノカウンセリング室

某都某市駅前

13時〜20時(メールにて要予約)

定休日 毎週月曜火曜

カウンセラー 黄泉野カレン

 


 

霊カウンセラー

黄泉野カレンは悪気を捌く

依頼人(11)控えめに言って耳福

 


 

 

 

超短編小説集合体

霊カウンセラー

シーズン2

=黄泉野カレンは悪気を捌く=

 

井越歩夢

IGOSHI・WALKER

 

次回予告

 

依頼人(12)

「壊れたそれは戻らない」

 3月28日(木)投稿予定 

 

 

 

 

【用美公式オンライン】 YOUBI.shop