依頼人(2)きっと意地悪 | IGOSHI・WALKER’s THIS IS ME =井越歩夢は書く語る=

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井越歩夢(IGOSHI・WALKER)

ライトノベル作家・ブログ小説家・AI生成イラスト・AI生成文書技師

そんなこの私のつらつらと思うまま徒然なるままに何か何かを書く語る場所である

 

霊カウンセラー

黄泉野カレンは悪気を捌く
依頼人(2)きっと意地悪
 

1月14日。日曜日。

今日の仕事の時間を終えれば、待望の休日・・・と言うか待望の夜のBARアムリタでの夕食とお酒の日。朝起きたその時から、気分の高揚を抑えるのに一苦労しそうな、そんな1日の始まりを迎えていた。

私は黄泉野カレン。某国某都某市駅前近辺でヨミノカウンセリング室を運営しているカウンセラー。年齢32歳。独身。1人暮らし。趣味は休日の映画鑑賞。バイク。お酒。そして・・・新聞を読むことである。

今朝も朝食を取りながら新聞を読み、世間の、時勢の、事件の、そして気になる休日の天気の、私の休日月曜火曜の天気のチェックをし、その内容を・・・・

そんな時、部屋の呼鈴の音に私は気を移すことになった。日曜日の朝。日曜日の朝である。このタイミングで私の部屋の呼鈴を鳴らす人物は1人しかいない。

私にリアルな今の若者情報を教えてくれる元依頼者。そして今は一回り年齢の若い友人。

新聞を置き椅子を立った私は、玄関へと向かう。そしてドアスコープを覗くとやはり予想通りそこにはいたのはお土産を掲げて満面の笑みを150km級のストレートで投げかけてくる彼女だった。

相変わらずの元気の爆弾に充てられ、私も思わず微笑んでしまう。

「いらっしゃい。」

私は玄関扉の鍵を開け、彼女を部屋に迎え入れた。

 

真城ナミ。(ましろなみ)

茶色のショートヘアに白のタートルネックとデニムのパンツ・・・お土産のドーナツを片手に私の普段着をそっくり色違いで真似したコーデを纏った彼女は2年前私にカウンセリングの依頼メールを送ってきた元依頼者。年齢は・・・20歳のはず。

初めてヨミノカウンセリング室に彼女を迎え入れたのは、真城ナミ18歳だった記憶。当時彼女は高校3年。季節は夏。そんな記憶。そう、たくさんの依頼者と接している私からして記憶に残る依頼者は、まあ依頼者には申し訳ない話だが正直なところ少数にとどまる。彼女はその少数にとどまる記憶に残る依頼者その一人。いや、記憶に残ると言うより・・・・私の記憶と私の生活に入り込んで来たたった一人の稀な依頼者だ。

依頼者としてここに訪れた彼女。

2年前彼女を一目見た瞬間から、そう、その瞬間から一言で見ていられないというほど、或いはよくそれを支えているものだと、悪いなは思いつつ半ば驚きと関心を入れ混ぜた感情を持たざるを得なかった。それほど強烈な悪気を背に乗せて彼女はここに訪れたのだ。

手に負いきれないかもしれない。そう判断した私はこの時今まで頑なに拒んでいた仕事の依頼メールを初めて友人、原アイラに送った。

幾度か幾度かのカウンセリング。そしてアイラの仕事も程なく終了したことで、彼女はゆっくりとではあるのだが確実に悪気から解放され新しい自分へと着実に成長し、そして、そしてだ。

それ以降、彼女は私を。表向き心理カウンセラーとして仕事をしている私の仕事に興味を持ち、自らもそれを目指して勉強をしている。そのためこうして私の部屋に顔を出すようになった。

それが彼女と私の馴れ初めである。

 

 

「カレンさん、いつも新聞読んでいますよね。」

ドーナツを嚙り私の淹れたコーヒーを飲みながら彼女はそう私に言葉を投げかける。

「ええ。そうね。」

「うーん、カレンさん。新聞読んでいて面白いですか?何だか私新聞って、すっごく嫌なものを見せられているように感じてあまり好きじゃなくて見ないようにしているくらいですけど。」

「ええ。そうね。」

同じ言葉で2回、彼女に返事を返しそして私は一旦新聞をテーブルに置いた。

「まあ、確かに。新聞、ニュースもそうだけど、人間は心理的に誰も悪い情報に焦点を当てやすくなるように出来ているから、記事を見ることでそれがたとえ、自分の身近で起きていることでなくても不安に感じ、でもそれを見ずにいられない。心理的にね。」

「それじゃあ、先生新聞を読むたびに毎日嫌な気分になりませんか?」

「うーん・・・・そうね。ナミちゃん。これは私の新聞の読み方、ニュースの見方、記事の捉え方であり楽しみ方。誰も彼もにそう見なさいという話ではないと言うことで、聞いてね。」

「うんうん、で、どんなお話?」

彼女は若干喰い気味に、きっと気のせいなのだが彼女は前のめり気味に私の話の続きを、それはそれは興味津々に聞きたい!という姿勢で私を見ていた。2年前初めて彼女と会った時からは想像できない元気の良さ。私は彼女の圧に一瞬引き気味、そして喜んで続きを話し始めた。

「まず結論を言うと、私は新聞記事をある意味エンタメと捉えているの。」

「エンタメ?漫画とか映画やドラマみたいに?」

「そう。そんな感じね。もちろん、新聞を見て今起きている出来事を知る、今を知る、それを知る。それももちろんあるのだけど、でもそれだけじゃないの。それだけだったら別の方法でいくらでも今世間で起きていることを知ることはできるから。」

「それじゃあ新聞じゃなくてもいいじゃないですか。」

「そうね。ただ、私的に新聞をエンタメと捉えているのは・・・・この記事。この記事は記者の書いたものであって今そこで起こったことをそのまま、ありのまま書かれたものではない。記事は記者の見たものを記者の視点で書き起こしたもの。そして記者は人であり、人である以上、その記事には記者の想いが加味されることもあれば、振り払うことのできない柵のために、本当に書きたい形で書き起こせないこともある。その逆もまた。そして書き上げられた記事を見ながら私はその記事を書いた記者の思い、想い、そしてその裏でどんなことが起きていたのか。この記事の構成から見た時のこの記事が世に出ることで誰が得をし誰が損をするか。そんなふうに、気になる記事の内容の裏を考察するの。そしてそれを楽しむ。新聞記事をエンタメ的に捉えているというのはそういう意味なの。」

・・・ちょっと話しすぎた。これではまるで私は捻くれ者です、と壮大なアピールをしているようじゃないか。しかし、まあしかし仕方ない。一度言葉にして発してしまったものはどんな形であれそれを聞いた人の、者の、人々の心に残る。衝撃的であればあるほどに。

私とナミちゃんの間に、ふと、一瞬の間、沈黙が降りてきた。ナミちゃんは何か考えている様子だった。彼女なりに私の話を噛み砕いて理解しようとしているのだろう。そして、

「・・・・ん!あ〜、うん、何だかわかった気がする。うんうん、そう言うことなんだ。」

一瞬沈黙した彼女だったのだが、どうやら彼女は私の言いたいことを理解してくれたようだ。いや理解してくれたようだと私の都合のいいように解釈した。

 

その後、私たちはコーヒーとドーナッツを楽しみながら他愛もない会話を気付けば1時間、いや2時間ほど続けていた。時刻は10時30分。カウンセリング室のOPENは13時。そろそろ仕事の準備を始めなければならない時間だ。

「さて、じゃあそろそろ仕事の準備を・・・」

「あ、ほんとだもうこんな時間。っと、そうそうカレンさん。前に話した助手の話、考えてくれてる?」

「ん・・・そうね。」

そう、以前から彼女は大学を卒業後私の助手をしながらカウンセラーの勉強をしたいと言っているのだ。私の助手・・・困ったな。

彼女を助手に雇ったら・・・

「でもまずは、大学を卒業すること。今しかできないことを今一所懸命楽しむこと。それに集中ね。」

「はい、カレン先生。」

彼女はそう言って、満面の笑みを浮かべている。

もしかして彼女も今の私の言葉を彼女の都合のいいように解釈したのかもしれない。まいったな・・・でも、そんな彼女の満面の笑みはいつも悪気と向き合いっている私の心に明るい温かみの花を咲かせてくれる。

「あ、でもなんだか今の、答えを先送りされたっぽい気がする・・・・」

「ふふ、それは私がきっと意地悪だからかな。」

「えー!」

今度は私の方から彼女に、真城ナミ、ナミちゃんに満面の笑みを投げかけそしてこの部屋に私たちの笑い声を、喜々花を咲かせた。

 

ヨミノカウンセリング室

黄泉野カレン

 


 

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黄泉野カレンは悪気を捌く

依頼人(2)きっと意地悪

 


 

 

 

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次回予告

  

依頼人(3)嚙み合わない(仮)

1月25日(木)投稿予定

 

依頼人(4)そうかもしれない(仮)

2月1日(木)投稿予定