seiさんの素敵なお題をいつも指をくわえてみていたのですが、いつか私もあの穴に落ちたいと思っていたところ、大きな水たまりに落ちましたぁ~~~わぁ!!


そんな素敵なsei様のお題はこちら ↓

ちょっと長くなってしまいそうなうえに更新には少し時間がかかりそうです。

気長におまちくださしましぃ~~


「危険信号(仮)」


ラブミー部は卒業できていないが、タレント兼女優として人気も知名度も出てきたキョーコにマネージャーがつけられることとなった。

それはキョーコも共演したことがある、俳優貴島の3つ上の兄で。

他所からの引き抜きで入った所謂敏腕マネージャーな貴島兄は、仕事もできて、顔は甘めの弟に比べると少し強面気味だがそれなりに男前でモテる男だった。

軽さがなく、仕事ができる大人の男。

蓮にとっては、一刻も早くキョーコから引きはがしたい相手だったが、京子にとっても事務所にとっても「ベストなマネージャー」をやめさせるのは難しく。


タイトル、内容、アレンジ自由!
蓮と新マネージャーとの攻防を楽しく書いちゃってくださいw




男は長い廊下を歩いていた。休憩時間が終わったばかりの廊下はシーンと静まりかえっている。
すっかり日課となったこの寄り道も、はじめは興味深く見られることもあったが、今では誰も違和感を覚えず、男が到着するとまるで業務の一部でもあるように、男に会釈をしてから迷うことなく一人の男を呼びに行ってくれるまでになった。


なんとなくいつもと雰囲気の違う室内の様子に、首をかしげながら相手を待っているとパチパチと拍手の音が聞こえた。


・・・・ん?


音のする方に視線を向けると、人事異動があったのか、部屋の中からは微かに挨拶をしているような声が聞こえた。
その内容までは聞こえないのが残念だった。


挨拶が終わったのか、声がきこえなくなるのと同時に、再びパチパチと拍手が聞こえる。その音に耳を傾けていると、その視線の先に嬉しそうにひよっこりと椹が顔をみせた。


「なんだ、社か?」


「あ、椹さん・・お疲れ様です」


「ん?今日も最上くんの予定で良いのか?」
すでに暗黙の了解と言わんばかりに、椹は返事を待たずに引き出しからスケジュール管理用の用紙を取り出す。


「今週と、来週の分だ」
印刷しておいたから、持っていって良いぞ。といいながらタレント数人分の予定も一緒に入っている一覧を社に渡した。


「そういえば、どなたか異動でもされたんですか?」
社の問いに椹は一瞬なんのことだ?と首をかしげてから、室内に視線を向け、大きく頷きながら笑顔でこたえた。


「あ、彼のことか・・・珍しく社長自らスカウトしたらしい。タレントセクションの営業にと思っているんだが、まだ本人の希望を聞いていないんだよ」
社長自らスカウトした人材にかなり興味を引かれたが、まだ何の業務をするのか決まっていないと言われ、それ以上話題が思い出せず、そのまま違う話題にはながさき、すっかり彼の存在を忘れてしまった。


社は、その事を数週間後、後悔することになるとは夢にもおもわなかった。





*******


「社さん、最近よく・・彼を見かけませんか?」


蓮に小声で質問され、社は蓮の視線の先に瞳を移して相手を確認する。
富士テレビに到着した瞬間目にしたのは、昨日キョーコと仲良く話をしていた男だった。


「あぁ、確かに最近よく見るよな・・・・」
キョーコとスケジュールが会うときは、必ずといって良いほど彼を見かけた。


しかも昨日はかなり仲良く話をしていて社も驚いたほどだった。
スケジュールさえ詰まっていなければ、直接話すきっかけができたのだが、声をかける暇さえとれず蓮が視線だけでキョーコを追っていたのを社は隣で見ていた。


蓮が気にするのも分かる気がする・・
礼儀正しい彼女が、蓮よりも砕けた様子で話をしていた。まるで、昔からの知り合いなのではないかと錯覚するほどだった。


・・・・もしかして、本当に知り合いだったのかな?


社は隣の蓮を見た後、彼に視線を移す。
女性ウケしそうな、端正な顔立ち。
どこかで会ったことがあるような不思議な感覚もあり、さらに人を引き付けるようなオーラがあった。


「タレントセクションに入社した新人だよ、社長自らスカウトしたらしいぞ?」


「え?社長がですか??」
蓮は、訝しげに眉間にしわをよせると腕を組んで考えるポーズをとった。


「今度は、・・・・何を考えているんですかね?」


「ん?あぁ・・社長が、考えなしにスカウトするとは確かに考えにくいな・・・・、明日にでも椹さんに確認してみるよ」
社は、そう言うとスケジュール帳にメモをとった。


番組の収録が終わると蓮と社は驚きの光景を目にする。
今朝話題にしていた彼とキョーコと貴島の三人が、楽しそうに会話をしていた。それだけでもすでに驚きに値する光景ではあったが、彼の手がキョーコの頭を押さえ、貴島に冗談のように頭をさげさせたことに社と蓮は衝撃を受けた。

笑い合っている3人はとても楽しそうで、蓮は取り残されたような気がした。
この数日の間に、自分の知らないところで仲良くなっていた二人に、隠しきれないほどの嫉妬心が芽生える。
いつの間にか自分がキョーコにとって一番近い存在だと思っていた。
それが今、目の前で音をたてて崩れていくような錯覚に襲われた。


「蓮?大丈夫か?」


「え?・・あ、はい大丈夫です」

どこか上の空で返事をしながら、心の傷を隠すように蓮はそれ以上その事について何も言わなかった。






つづく

あまりに久しぶりなので、ちょっとこんなところでご挨拶。


久しぶりに本館を更新しました~~。


前・後編の短いSS 

良かったら立ち寄ってくださいましぃ~


瞳を開いているはずなのに、暗闇に一人取り残されたように何も見えなかった。

不思議と怖さは感じられなかった。

ただ、のどがひどくカラカラで、声を出したいのにそれを妨げていた。


「・・・・ず・・しい」

水がほしいと 言ったはずなのに言葉にならない。


かすかに感じた明かりに大きな影が映った気がしたが、それも深く考えられないほどキョーコの体は熱に侵されていた。

ふんわりと宙に浮かぶように体が持ち上がったように感じたのは熱のせいなのか、現実なのか、キョーコはあやふやな世界で一人孤独と向き合いながらそんなことを感じていた。



「・・・・コ・・キョーコ?・・大丈・・か?」

夢の続きのような、ショータローの優しい声にキョーコは、ふんわりとほほ笑んだ。


「・・・に?・・なに?」


「飲めるか?」

口元に冷たいグラスの縁があたり、キョーコは急に現実に引き戻され大きく瞳を開いた。


「・・タ・ロー・・?」

驚きで見開かれた瞳は、いつもと違う優しいショータローの表情をとらえた。


「ったく・・人が説明している間に急に寝るなっつーの!」

言葉とは違い優しい眼差し

何かがいつもと違う・・・。

そのことにキョーコは急に不安になった。


「・・?・・でここに?」


「お前が意味不明なことを最後に言ったっきり・・電話にも出ないから心配したんだよ・・わりぃ~かよ?・・・で、さっきの話覚えてるのか?」

眠っていたキョーコのベッドに座り、ショータローはキョーコの顔を覗き込むように視線をとらえた。

ギシリと軋んだベッドの音が静かな部屋に不自然に響く。



何年も見慣れた表情なのに、初めて出会ったような不思議な感覚

・・・こんな優しい表情のショータローを見たことがない・・。

あぁ~そうか・・さっきの・・約束って・・・


「・・・・付き合う・・・ってこと?」


「・・・だよ・・ったく心配させんな!」

そっぽを向いたショータローの顔

かすかに赤く染まった耳が本当に心配していたことをものがたり、キョーコは心の奥がほっかりと暖かくなった。


自分の頭がついにおかしくなったのかと思った。


ショータローの優しい声がまだ耳に残る・・・・

あんなにやさしい声を今まで聞いたこはなかった


聞きなれていた声とは少し違い、熱を帯びたような優しい声が頭の奥にいつまでも残り、キョーコの頭を支配していた。

その声は、キョーコの考えを鈍らせる。


さっきまで、蓮から連絡がないことにがっかりしていた心も、ショータローのお蔭というべきか、いつの間にか頭の片隅から追いやられ、落ち着きなくベッドの中で電話のやり取りを思いかえしていた。




『・・・・キョーコ、俺と付き合ってくれ』

何の冗談かと思った。

また、からかわれたのだと思い、すぐに返事をしてしまったことを後悔したのは、電話を切った後だった。


『・・1週間・・いや、10日間・・・・その間だけで良いから、ほんとの恋人らしく接してくれないか?』

ショータローに頼みごとをされることは何度もあった。だが、私の心を確認するように頼まれたのはこれが初めてだった。

あまりにも真剣な声と優しい言葉遣いに、愛を忘れて凍り付いていた心が溶けそうになったのは、自分でも驚いた。


かすかに心の奥で何か心の動きを変えるようなキシリという音を聞いたような気がした。


「理由は・・・?」

何とか振り絞って出した声はカラカラで、違う自分が無理やり声を出したような感覚だったのをキョーコはベッドの上で寝転がりながら思い返す。

瞳を閉じれば、まるで耳元で囁やかれていたような錯覚さえ感じた。


『それを・・それを言いたくないからお前に頼んでいる・・・・頼む・・キョーコ』

擦れた声が切なく聞こえ、ドキッとした。

心臓がわしづかみされたようにキリキリと痛み出し、キョーコはあわてて頭を振って心を現実に戻し、瞳を開いた。


はぁ~

「・・私何やってるんだろう・・・・」


ただでさえだるい体が一段と熱を帯びて動き辛くなってきたのを感じる。

ベッドに横たわる体をまるで客観的にとらえているかのような感覚が襲ってくると、自分がこの世に存在していないような感じだった。


気が付けば、さっきまで痛んでいた節々の痛みも今は熱で感覚すらない。


早く寝なくちゃ・・・

そんなことを考えたのはほんの一瞬であっという間にキョーコは夢の世界へ足を運んだ。