「・・・・全く、これで特定の彼女がいないなんて、貴方に原因があるとしか思えないわ?」
カクテルを何杯か飲んだミシカは、饒舌に話をしている。蓮はそんな様子を冷静に観察しながら話を聞いていた。


「それは、選んだお店を気に入って貰えたってことかな?」


仕事で忙しいはずなのに、いったいいつ調べたのかしら・・
私好みの店に、文句のつけようがないわ?


その質問にミシカは色っぽい唇をわずかに動かし妖艶な笑みを作った。


「・・・・もちろんよ!」


「それはよかった・・」
氷の美貌をわずかに歪め艶やかに微笑んだ。


その後、経済界の話から、ファッション、友達の結婚の話など、ミシカは次から次へと話題を変えていった。
蓮はどの話にも終止的確な答えをして聞き役としても申し分ない相手だった。


「どうかした?蓮・・」
蓮が一点を見つめていた。
その視線の先には、人目を引く男女のカップルが仲良さそうに寄り添っていた。


「・・知り合いなの?」


珍しいわね?そんなに凝視するなんて・・
その言葉は心のなかでつぶやき、ミシカは蓮の様子をじっと見ていた。


「・・・・あ、ごめん・・知り合いに似ていたので・・さて、そろそろ移動しようか?」


「あっ、そうね・・じゃ、ちょっとだけ席をはすしても良いかしら?」


蓮は笑顔を答えとし、ミシカが席を立つのを見届けると、窓際に立っている男女に視線を戻したら。


・・昼間会った男性と・・・・1日中一緒にいたのか?
ナツさんが最上さんだという事実は蓮の中で複雑に絡み合っていた。


鋭い眼光が、彼女に対してなのか、それともその隣の男へなのか深く考えず、ウイスキーを手に取ると、ガラス越しに映る彼女の表情を見て、自分で気が付くことなく微笑していた。