キョーコが来なかったことに落胆して、あれほど考えていた謝罪の言葉も気がつけば言い訳の言葉を考えていた。


今更、何を言い訳するのか・・
キョーコの来ないこの部屋がひどく居心地が悪く感じるのはなぜだろう。


「琴南さん・・最上さんはしばらくお休みのようだけど、理由を教えてもらえないだろうか?」


自分が緊張しているのがわかる。
彼女の話をするときなぜかいつも緊張しているような気がした。
失礼なことばかり言っているからだろうか・・・


いつまでも消えなかった胸のつっかえが、一段と苦しいものになり奏江の返事を聞きたいと思うのに、同じくらい聞きたくないと思っている自分がいるのも事実だった。


「しばらく・・抜け出せない用事があるとしか聞いていないので、詳細はわかりませんが・・最上に何か用事がありましたか?」


「いや、・・ちょと失礼なことを言ってしまったので謝りたかったんだけど・・謝らないまま数日が過ぎるなら、直接最上さんのところにいこうかと思ってね・・」


「・・彼女は、気にしないと思います。あらたまって謝罪なんてしたら、キョーコは、・・最上の居心地を悪くするだけです。それにどこにいくつもりですか?彼女の自宅は教えられませんし、もちろん仕事で移動している場所もお教えできません。」


「そうだね・・会社にいるわけではなかったね・・」
蓮はその答えを聞いて満足したのか、作られたような微笑を浮かべるとそれ以上追及しなかった。


キョーコが仕事でここに来られないことがわかると、心の奥に何かが広がった。それが何かは考えずに蓮はほっとした自分の想いを心の奥深くにしまいこんだ。