仕事中にも関わらず、蓮は時折考え事をするように窓の外へ視線を向けることが多くなった。
18時を過ぎた頃には、髪をかきあげたり、窓辺に立ったりとさらに落ち着きがない。


キョーコが部屋の掃除に来る日だと思うと何をどうやって謝るか、朝から考えているのにその答えが見つからず、時間ばかりがあっという間にたってしまい蓮はため息をついた。


~ふぅ
一度ならず・・まったく・・


彼女に何度同じ過ちを繰り返せば気がすむんだと自問自答しながら、早々に仕事を切り上げて部屋で待っていると、待ちわびていたチャイムの音が部屋に響いた。


「はい」
短く返事をすると、聞きなれない声か聞こえてきて、蓮は首をかしげた。

「こんばんは、LME の琴南と申します。ご連絡さし上げたと思いますが、しばらく最上の代わりに担当させていただきます。」
琴南の言葉のどこにそう感じたのかわからなかったが、チクリと胸が痛んだ気がした。


「まだ、俺のところまで、連絡がきてなかったみたいだね、確認するので待ってもらえるかな?」


「はい」
琴南がモニタ越しに笑顔で挨拶するのを確認すると蓮は社に連絡をした。


「社さん・・今日部屋の掃除に・・え?・・そうでしたか、すみません。見落とした見たいですね。・・そうなんですか・・・・いつまで?・・わかりました。今、琴南さんが来て・・・」


社に昼過ぎにメールをしたと言われ、蓮は記憶を手繰り寄せた。
今までどんなに忙しくてもそんな失態はしたことがないのに、一瞬聞き間違えたかと思い数時間前の行動を思い浮かべてみたが、確かにメールをチェックした記憶はあってもその内容を思い出せなかった。


いったい自分はどうしたと言うのだろうか・・


電話を切るとすぐに琴南を部屋へ通し、簡単な説明をしようとしたところで、最上から聞いているので大丈夫です。と言われた。
琴南が部屋の間取り図を出すと、入室禁止の部屋には色がついていた。


「ここ以外を掃除すれば良いでしょうか?」


奏江が間取り図の色のついている部屋を指して質問すると、蓮は小さくうなずいて よろしくね、琴南さん。と言って笑顔で答えた。