「・・・最上さん、しばらく休みなんだって?」
「そうなんだ、彼女がどれだけ気遣って仕事していたか、身に染みるよ・・それに彼女の笑顔がないと癒されないよな・・」
コピー機の前で用紙を入れながら、社員が話をしているのを耳にした。いつもなら、紙がなくなる前にキョーコが補充しているのだろう。慣れない手付きで用紙を入れている。
社は、何気なく立ち寄った営業部での会話に驚いて携帯電話を取り出すと、昨夜送ったメールの返信がない。
いつもなら朝には返信が来ているはずなのに、珍しく返事がこないのは、休んでいる理由と同じだろうか?
時計に視線を向けると、時刻は12時少し前、電話するにも問題ない時間だった。
携帯を手に取りすぐにキョーコに電話するとコール音がいつまでも鳴っていることに不安になった。
頭の片隅で、キョーコが電話にでないことは分かっているのになぜか切ることを躊躇した。
「居留守?・・」
いや・・それはないだろう
礼儀正しい彼女が居留守をするとは思えない
そんなことするくらいなら、電話しないで下さいと直接言われる方がしっくりくる。
・・やっばり昨日のことが原因か?
それとも別の何かが・・
社は食堂に向かうはずだった足を営業部に向け、キョーコの休みの理由を確認するために丸山の席に向かった。
「・・丸山さん」
社が声をかけるとなぜか周りの女性社員がチラチラと二人を見る。
そんな視線を感じることなく社が話を続けると、聞き耳をたてていた女性社員達がつまらなそうに仕事を再開した。
「・・最上さんは、今日休みなのかな?・・いつまで休みだか聞いている?」
その言葉にチラリと丸山が視線を向けた後、小さくため息をついた。
「社さん・・貴方もですか?」
「・・え?」
言われたことがわからず、聞き返す。
「午前中で三人・・今日、私が最上さんの休みがいつまでなのか教えて?と言われた人数です。その他にも様子を見に無駄に立ち寄る男性社員は、四人ほどいました。・・まさか社さんまで聞きに来るとは思いませんでしたけど・・。」
「いや・・これは・・」
「・・『人に訊かれたから、代理で訊きに来たんだよ。』なんて言い訳まで同じじゃないですよね?」
丸山に図星され社は苦笑した。