「キョーコちゃんて、あのキョーコちゃん・・だよな?」
社は蓮を疑うような視線で見つめた。


「あなたがよくご存じの・・彼女のことです。」


「おまえ、・・どんな失礼なことしたんだ?」
さっきまでは、自分の見方のような発言をしていた社が、急に態度を変えたことに蓮は苦笑して、椅子から立ち上がると窓際に近寄って外の景色を眺めた。


「社さん・・女性に謝るのは、どうすれば良いですかね?」
社はその言葉に立ち眩みして、近くのテーブルに手をついて深いため息をついた。


「おまえな・・」
呆れた顔で、蓮を見るとひどく真面目な顔で考えこんでいる様子に、社はその先の言葉を飲み込んだ。


女性に叩かれたこともなければ、喧嘩さえしたことがない。


こんな状況を自分が作り出してしまったことに蓮自信が一番驚いていた。
最近度重なるモヤモヤとしたこの気持ち、それからも抜け出せる気がせず、蓮は自分の感情をもて余していた。


・・・・はぁ、一体何が原因なんだ?


過ぎてみれば、なぜあんな失礼な事を言ってしまったのかと冷静に考えることができるのに・・
なぜかあのときは・・・・


心の深い部分から黒く濁った塊が次から次へと膨れあがってきて、気がついたら彼女に叩かれていた。
その時の最上さんの表情を思い返すと、心に突き刺さるような痛みが走り苦しくなった。


彼女は、傷ついた顔をしていた。
俺の頬を叩いてしまったことに、手をながめながら今にも泣き出しそうな顔をしていた。


もしかしたら、泣かせてしまったのかもしれない・・


再びチクリと痛みが走り大きく行きを吸うことで、痛みから目をそらした。