「最上さん・・何か手伝えることあるかな?」
キョーコが楽しそうに料理をしている姿を見て、蓮も一緒に料理をしてみたくなった。


「いえ、だ、大丈夫ですよ!それにこれは、私の仕事ですから・・」


当たり前のことを言われたのに、なぜか心の奥で寂しさを感じ蓮は、キッチンに近づくとシャツの袖を捲りながらキョーコの隣に立って笑顔をむけた。


「楽しそうだから俺にも手伝わせてくれる?」
人懐っこい笑顔でキョーコに訪ねるとキョーコは一瞬動きを止めた後、嬉しそうに蓮を見上げた。


「はい、では・・こっちは終わったのでこれに盛り付けて下さい。」
そう言いながら蓮に一皿手渡すと蓮はキョーコを見つめて首をかしげた。


「最上さんも食べていくでしょ?」


「い、いえ・・私はその・・もう帰宅しますので・・」


「一人だと、せっかくの食事の味が半減してしまう気がするから・・よかったら、一緒に食べてくれないかな?」
その優しい笑顔に船上で言っていた瞳の言葉を急に思い出した。


・・いつもこんな素敵な笑顔で笑っていれば良いのに・・
芸術家も匙を投げ出したくなるような美しい顔・・
同じものは2つとできない精巧な作り・・


じっと見つめられると本当に良くできた彫刻のようだった。


キョーコは、知らずに蓮の頬に手をのばし、その頬に触れる。蓮は、驚いて瞳を見開いた後クスリと笑った。


「・・クス、女性にそんな風に見つめられるとキスしたくなるよ・・それともしてくれるのかな?」
その言葉にキョーコは我に返り、驚いて手を離した。


「ご、ごめんなさい・・あ、あの、あまりにも綺麗だったので・・そ、そその、失礼しました。」


「そう、ありがとう。そのまま襲ってくれてもよかったのに・・」


クスクスと蓮が笑い始めるとなぜかいつまでたっても笑いがおさまらず、いつのまにかキョーコもつられて笑っていた。


たいした話でもないのに、なぜこんなにも心から楽しいと思えたのだろう・・


彼女の笑顔に孤独な心が癒されていく気がして蓮は、久しぶりに心の奥底から笑うことができた気がした。