甘い香りに包まれて、久しぶりにゆっくりと眠れた気がした。
そろそろ出社時刻かと思い寝返りをうって近くに置いてある時計に視線を向けると、起きるにはまだ早い時刻だった。
・・・4時か・・
喉が乾いたと感じて、軽く咳払いをしながら体を起こすと、フワリと夢に見た香りがして自然に笑みをこぼす。
「あれ?・・」
・・ブランケットなんか、かけてないよな?
どこか夢見心地に、そんなことを考えると、手にしたフワフワのブランケットから微かに香る甘い香りで船上での出来事を思い浮かべた。
ん?
・・ぁあ・・彼女の香りに似ているんだ
・・・・・・
誰かがこの部屋を訪れたのは間違いないことがわかる。
しっかりと目覚めていない頭で考え巡らせていると思いあたる人物が二人浮かんだ。
社さんか最上さんか・・
この時間にこの階までこられる人は、他にいないはず・・・・
「・・ってことは、社さんかな?・・明日お礼を言っておくか・・」
彼女の移り香が、社さんを通して届いたのか・・
蓮はクスリと笑みを浮かべた。
船上で見た二人の様子は誰も入り込めない穏やかな雰囲気に包まれていた。
そのことを思うとなぜか、もやもやと胸の奥がひどく落ち着かず、冷蔵庫に向かいながらボーっと外の景色を眺めて気分を紛らわせた。
額にかかる長い前髪をかき上げ、少しだけ明るくなった空を見ると、なぜかため息がこぼれた。
スッキリと目覚めたはずの身体が、再び重い空気に蝕まれるような気がして、蓮は飲みほしたグラスをテーブルに置いて再びソファーに戻った。
倒れ込むようにソファーに寝転がるとブランケットからふんわりと彼女の香りがしたような気がしてまた自然と笑みをこぼしていた。