駐車場で待っていると言われ、キョーコは一人でエレベーターに乗り込んだ。


「毎回思うけど・・ここってかなりセキュリティーが厳重よね?・・ま、大手企業だったらそうか・・」

ぶつぶつと独り言を言いながら高層階へ上がるエレベーターの中で今日の出来事を考えていた。


瞳さん・・なんだかさみしそうに感じた・・・
敦賀さんと一緒にいて楽しくなかったのだろうか?


そう思って2人が寄り添う姿を思い出すと蓮の表情に違和感があった。


そうだ・・敦賀さんて・・心から笑っていないんだ
つくられたような笑顔・・・
氷の美貌と称される理由の一つなのかもしれない


柔らかい言葉使い、女性への気遣い、誰もが彼に心を奪われるのかもしれない・・・・
でも、一番の理由はやはり・・あの容姿だろうか・・
確かに美しいと思う
男性に美しいという言葉が適切なのかわからない
でも、他に当てはまる言葉が思いつかないほど、まるでつくられた彫刻のような美しさだった。


鍛え上げられた身体さえ・・
彼の魅力の一つだった。


ロッカールームのある部屋へ向かうと生ぬるい風が肌をなでた。
荷物をとり、中を確かめることなく紙袋を手にするとすぐに部屋を出た。
再びエレベーターホールに向かい待っていると、2つ上の階に丁度エレベーターが止まるのを見てキョーコは驚いた


「え・・・こんな時間に?」
心配になってキョーコは非常階段のドアに視線を向けた


この時間にこの階へ向かう人は限られた人しかいないはず
そのうちの一人は、今駐車場で私を待っていてくれる人
そして、もう一人は私のお客様である敦賀様・・・


瞳さんと一緒だったら自宅に招くだろうに・・この時間に社長室の階で止まることに訝しく思いキョーコは悩んだ末に非常階段を上り始めた。


「・・・こんな時間にこの階に来られる人って・・」


不安を胸に抱いたまま、キョーコはゆっくりと階段を上り始めた