彼女を家まで送り届けて自宅兼オフィスのマンションに戻ると、部屋へ戻る気にならず蓮は社長室へむかった。
電気もつけずネオンだけをたよりに部屋へ入ると大きな窓から見慣れた夜景がきらびやかに瞬いていた。



最近俺はどうかしている・・
今まで一度もこれほど気になる女性に出逢ったことはなかったのに
今回は、二人もいる・・


1人はこの部屋を掃除してくれる彼女だ。
印象的な大きな茶色の瞳が中々はなれなかった。



そしてもう1人・・・・


仕事仲間であり、友人である社さんの彼女だ。
彼女に関しては、先を望むなんてことは決してありえないが、社さんと仲良く話をしている姿を見つめずにはいられなかった。
まさか友人の彼女に手を出すなんてことはするつもりはないけど・・・・
・・もし彼女に誘われたら俺は断れる自信がない。



社さんの彼女だと知っていても・・・・


「いったい俺はどうしたと言うんただ?」


蓮は、今まで感じたことのない感情に戸惑いながら、医師から処方されている薬に手を伸ばすと冷蔵庫まで歩いて水を取り出した。



そういえば、最上さんに謝っていなかったな・・・・


蓮は、グラスに水を注ぎながら数日前の記憶を手繰りよせていた。


「頭痛薬を飲んだ後に酒を飲んだのがいけなかったんだろうな・・」


曖昧な記憶を繋ぎあわせようと蓮は、キョーコにキスをした時のことを考える。

何度考えても分かるのは、印象的な茶色の瞳。
そして甘い香りだった。


そんな事を考えながらソファに横たわると、いつもより早く睡眠が訪れた。


耳障りだった甘い囁きも今日は聞かなくてすむ。
その事に蓮は、微かに微笑んで安らかな眠りの世界の扉を開けた。



なぜか香る甘い香りを夢見心地に笑みを深めた。