『最上くん・・、君に頼みたいことが2つあるんだが・・明日と明後日にヒズリの仕事を追加で頼みたい。一つは蓮のところで夜飯をもう一つは、プライベートアクターの仕事で、社君の恋人役を5時間ほど頼みたいが、都合はどうだ?』

奏江と電話を切ると、まるでみはからったように社長から電話がはいった。

正直行きたくなかったが、大口のお客様な上に、社長とヒズリの先代は親友だった。

無下に断る訳にもいかず、いつも通り返事をした。

「はい、大丈夫です。詳細はメールで送って置いていただけますか?敦賀様の方は15時くらいまでに食べたいものを教えていただければ、何とか用意できると思います。・・社様の方ですが、急なご依頼のようなので、明日お昼ごろに立ち寄らせていただきたいのですが、ご都合をうかがってもらえないでしょうか?」

「おぉ、わかった・・それじゃ頼んだぞ!」

「はい、お任せください。」
電話を切るとキョーコは大きなため息をついた。

・・・敦賀蓮・・社長が氷の美貌と笑いながら話していたのを思い出す。

人外の美貌・・・・


確かにその言葉通り恐ろしいほど整った綺麗な顔だった。

紳士的で誰にでも優しいという話は・・本当だろうか・・
なぜ、急に私にキスをしたのか・・
誰かと間違えているようだったけど・・それは関係ない。

紳士とは程遠い扱いを受けたことには変わりない。
冷たい双眸とは違い・・優しいキスだった・・・
そのことを思い出し、キョーコは知らずに唇を押さえていた。

ハッ!

嫌だ、私・・何を考えていたのかしら・・もぉ・・まったく・・

何て危険な人なのかしら・・はっきり言って悪魔だわ!
心まで持っていかれそうで・・・

「うん。そうね・・そうに違いないは」
一人納得をしながらキョーコは今日会った出来事を心の奥底にしまいこんだ。