公園には人影がなく少し冷えた風が通り過ぎた。
蓮は風よけになるように風上に立つとキョーコを後ろから抱きしめて話をはじめた。
「すこし寒いね・・大丈夫?」
「ア・・ハ、ハイ・・その・・大丈夫デス・・あ、ありがとうございます」
さっきまで自分が蓮の腕を引っ張って積極的に行動していたのに、急に抱きしめられると緊張してうまく言葉が出てこなかった。
「・・それで、俺に訊きたいことって?」
「あ・・えっと・・その・・・・」
「言いたくないこと?」
「いえ・・その・・言いたくない・・と言うのではなくて・・ですね・・」
背後から聞こえる甘い美声と、その香りに、キョーコはうまく頭がまわらなかった。
「うん」
「あぁ・・あの・・ですね・・気を悪くしないで・・いただきたいのですが・・」
寒さと緊張でキョーコの声が少し震える。
「大丈夫だよ?・・何があったの?」
「えぇ・・と・・その・・あ・・の・・私の友人たちが・・ですね・・」
「うん」
「声をそろえて・・・・敦賀さんと・・」
「・・俺と?」
「その・・どういう関係なのか・・と訊かれまして・・」
「うん」
「あぁ・・あの・・尊敬しているし、目指している人です・・と答えたんですが・・『だからどういう関係?』といわれてしまい・・・・みんなが同じ質問をしてくるっていうことは・・その・・敦賀さんに迷惑をかけているのではないかと思って・・心配になってその勢いで連絡して・・しました・・でもよく考えたら・・ただの先輩後輩の関係だって言えばよかったと・・・・今更ながら思いまして・・」
「・・そうだったんだ・・で、なんでそんな話になったの?」
再び2人の横を少し強い風が吹くと、抱きしめている腕に力が入ったような気がした。
その質問にどうやって応えるべきかまだ、キョーコは考えていなかった。