キョーコは、電話を切るとそわそわしはじめた。
・・・・いったい何を聞くって言うのよ・・
しかも、敦賀さんの質問にうっかり『言えないことです』なんて言ったら心配して下さい。と言っているようなものだわ!
「・・本当になんて迷惑な後輩なのかしら・・いい加減呆れられちゃうわ」
独り言をブツブツと呟きながら、鏡の横を通りすぎると、部屋着を着ている自分の姿に慌ててタンスの引き出しから洋服を取り出した。
「ま、まさか敦賀さんがわざわざ立ち寄って下さるのに・・部屋着はないわよね・・・・」
こんな調子で洋服を探しながらずっと独り言を言っていた。
着替えが終わると、キョーコは携帯電話を前に姿勢よく正座をし、まるで悪い知らせを待っているような青ざめた表情をしてちょこんと座っていた。
「・・・・どうしょう・・敦賀さんを前にウソをつき通せる自信もないし、まさか、私たちどういう関係なのか訊いてみたくなりました・・とか・・あ~考えただけで、落ち着かないわ・・」
敦賀さんが、ただの先輩後輩の関係だよ、と返事を返してくれるのはわかっていても・・
なぜそんなことを思ったの?と訊かれたら・・・・
なんて応えれば・・・・
ブゥーンブゥーン・・ブゥーンブゥーン
携帯電話のバイブ音が机の上で鳴り響くとその表示名を見て嬉しそうに微笑んだ後、キョーコは急いで携帯電話に手を伸ばした。
「はい、最上です」
緊張して手が急に冷たくなったような気がする。
「こんばんは、最上さん少し外に出られるかな?」
優しい声にキョーコは、自然と笑みがひろがる。
「はい、・・少しお待ちいただけますか?」
言葉をはずませながら返事を返すと携帯電話を閉じて両手で包み込んだ。
大きく息を吸い込むとキョーコは携帯電話を持ったまま部屋を飛出し階段を降り始めた。