蓮は仕事を終えると、さっそくキョーコに連絡をした。


「こんばんは、最上さん・・電話をくれたみたいだけど何かあった?留守番電話には訊きたいことがあるって入っていたけど・・・・」

『こ、こんばんは、その・・すみません。わざわざご連絡いただいて・・・・その・・全く大した用件でな、なかったので、今度お会いした時で良いかと思って連絡しませんでした。・・その・・考えなしに連絡してしまいすみませんでした。』

「いや、大丈夫だよ?・・・・それより次回会った時で大丈夫なのかな?・・最上さん・・今どこにいる?」

あわてて連絡してきたにも関わらず、たった数時間の間に何があったのか・・

『・・はい、自宅にいますが・・』



時計に視線を向けるともうすぐ22時だった。

「帰り道にちょうどだるまやの前を通るから大通りまで出てこられるかな?・・何が訊きたかったのか・・気になって・・」

『いえ、そんな・・本当に大したお話ではないので、大丈夫です。お疲れのところ立ち寄っていただくなんて・・とんでもないです!』

キョーコが恐縮して応えると、蓮が穏やかな声で話を続けた。

「いや・・気にしないで・・・・俺がそうしたいだけだから・・」

『あ、あの・・で、でも・ですね・・その・・本当にたいしたことではなくて・・えぇ~っと・・・・』

キョーコの口調が急にしどろもどろしはじめて、蓮はクスリと笑った。

「・・どうかした?・・・・俺には話しづらい内容だった?」

『・・・・あ・・・・は・・い・・』
キョーコのしょんぼりとした口調にも、その返事にも蓮は驚いた。

「最上さん・・ちょっとだけ待っててもらえる?」

『え・・と待つのは、全く構いませんが・・』
キョーコが言いかけたところで、蓮が話をさえぎった。

「着いたら連絡するよ」

『え!あぁ!!あの・・本当にたいしたことでは!!』

そう叫んだ時にはすでに電話が切れていた。キョーコは呆然と携帯電話を見つめた。



ど、どうしよう・・・・

まさか・・私と敦賀さんがどういう関係か・・知りたいとも訊けないし・・


あ、そうか・・


先輩後輩の関係だって再認識できるかもしれない・・


「そうだ・・・・このさい訊いてみよう・・」


キョーコは安心して蓮の到着を待っていた。