こんにちは。イギリスの地方自治体でタウンプランナーとして働いているMarikoです。
働き始めて2年半経ち、ついに先週MRTPI 英国王立都市計画学会のメンバーになるためのレポートを提出し、来月の結果を待っているところです。
今回は、その都市計画学会のメンバーになるまでの道のりを簡単にまとめておきたいと思います。(所々ChatGPTの力を借ります。)
RTPIとは
まずRTPIとはRoyal Town Planning Instituteの略で英国王立都市計画学会です。日本でも、都市計画学会がありますが、アカデミックというよりも、実際働いているコンサルタントや自治体の技術職の人たちが加盟しています。また、日本では地域開発と言うと、都市がメインで、農村はどちらかと言うと農業政策よりになってしまうので、”都市計画”という名前が付いていますが、イギリスでは都市農村関係なく地域開発をするので、”アーバンプランニング”ではなく、”タウンプランニング”という名前になっています。
もしイギリスでキャリアを積みたい場合は、必ずと言っていいほど、このRTPIのメンバーになる必要があります。と言うのも、基本的にイギリスで就職する場合、キャリアラダーがまずグラジュエートレベル新卒からセミシニア、シニア(主任)、チームリーダー・プリンシパル(係長)、マネージャー(課長/部長)など、職場によって異なりますが、このようにキャリアを積み上げていきます。その中で、基本的にシニアになるためには、このRTPIの正会員であることを面接や昇進試験を受ける際に条件にされ、会員でない場合、セミシニアポジションにとどまることになります。
MRTPI : 正会員になるまでの道のり
正会員になるまでには、基本的に4つのルートがあります。
- Licentiate Route:RTPI認定学位+実務経験+APC
- Experienced Practitioner Route:豊富な実務経験で申請
- Apprenticeship Route:学位取得と実務経験を組み合わせた研修ルート
- Academic Route:都市計画分野での研究実績に基づくルート
ChatGPTより
詳しくはこちらから▼
私は1つ目のルートで申し込みました。RTPI認定のイギリスの大学院に行って、その後就職が決まったら、すぐにライセンシエイトとと言う種類のメンバーになって、そのライセンシエイトになって1年が経つとその時点で実務経験が2年ある場合は正会員に申し込む資格が発生します。
RTPI認定大学はこちら▼
私は日本での職業経験が4年以上あったので、イギリスで就職してライセンシエイトになって、1年目の時点で正会員に申し込もうとしたのですが、申し込む際に書くレポートの内容は過去2年の実務経験を元に作成しなければならなかった上に、それを証明するコラボレーター(上司など)も必要であり、イギリスで働いた1年の分は、イギリスの上司などに頼むことができ、説明も容易なのですが、日本でコンサルタントとして働いていた内容を(主に復興計画など)英語で全て説明し、日本の上司にこの仕組みを全て理解してもらい、英語で複雑な文章を書いてもらうのは難しいと判断しました。日本とイギリスの都市計画制度があまりにも違うことも一つの要因で、レポートを評価する人はもちろんイギリス人なのでその人に適切に日本の都市計画を理解してもらうことがこの3000字の限られた文字数のレポートでは難しいと思いました。
結局、イギリスでの実務経験2年についてレポートに盛り込むことを決めたので、イギリスでの就職から2年経った時点で申し込みました。
RTPI認定の大学院
ひとつめのライセンシエイトのルートを選ぶ場合、まず認定の大学院コースに行く必要があります。私はプリマス大学のタウンプランニングコースに行きました。当時の様子については別のブログ記事をご覧ください。一番下にまとめています。
1年のコースでしたが、内容が盛りだくさんでタウンプランニング制度や歴史、アーバンデザイン、ルーラルプランニングなどのモジュールがありました。他の大学院に行った人の話を聞くとそれぞれの大学で、又は大学の教授やレクチャーラーによって強みが異なるのである大学はネイバーフッドプランニングに重点を置いていたりある大学はアーバンプランニングに力を入れていたりとあるので、もしも大学選びをされている方がいれば、きちんとその大学の教授人の論文やモジュールの内容を確認することをお勧めします。
RTPIの認定コースなので、もちろん学会の人たちがきちんと彼らが求めているクオリティーのレクチャーを大学が行っているかなどをコースの終わりにチェックします。学生である私たちにもインタビューがあり、学んだことや不満があったかなどの質問がありました。
また、コースの始まりにはRTPI学生メンバーになることを求められました。と言っても、形式的なもので、フォームにサインするだけで年会費は無料でした。ただし認定コースではない大学院の学生は年会費が必要でした。なので、認定コースの大学院に行くメリットはここにもあると思います。会員になるとRTPIが主催するイベントやウェビナーに無料で参加できたり、ニュースレターを無料で受け取ることができます。
就職後、ライセンシエイトになる
私は大学院から卒業認定をもらったのが2022年11月でその後、一時的に日本に帰り、イギリスで就職したのが2023年の3月でした。その後4月にライセンシエイトに申し込みをしました。ライセンスエイトは学生会員と違って年会費が発生します。そして、その年会費も年々値上がりをしています。現時点では年74ポンド(15000円ほど)。これは会社が払ってくれる場合もあります。もしジョブディスクリプションのリクワイアメントに書かれていなければ自分で払う必要があります。また、この年会費とは別に登録するための登録費用が別途かかります。そして、ライセンシエイトになって、3年が経つとチャータードメンバー/正会員になるのを促すためか、ライセンスエイトの値段が上がります。
正会員申し込み、レポート提出
正会員になるためには私が選んだルートでは、まずライセンシエイトになる必要があります。私は2023年の4月にライセンスエイトになり、2024年4月には、正会員に申し込む資格があったのですが、先ほども言ったように日本の経験も含むことはできるんですが、実際には説明が難しくレポートが作成できないと思ったので、2025年の3月、イギリスでの実務経験が2年以上になるまで待つことにしました。
正会員になるためにレポートを提出する必要があります。このレポートの作成がものすごく辛いです。
レポートの提出期限は年に四回あります。
今年は2月5月8月11月に提出期限があります。私は3月には実務経験2年を得ていたので、5月には提出できたはずなのですが、4月に一時帰国をしていたので、余裕がなく8月に提出することにしました。
APCレポートの作成
レポートは、APC Assessment of Professional Competency で専門能力評価と言われています。日本の技術士に少し似ていますが、テスト形式ではなくレポート作成をして提出する形式です。
時間が有限だからこそ、どこまで突き詰めるか、論文のような大変さがあります。
APCレポートは主に3部構成です。
- PES(Practical Experience Statement)1000字
自分の実務経験をまとめた文書。どのプロジェクトで何を担当し、どの能力を身につけたかを記録。 - PCS(Professional Competence Statement)3000字
RTPIが定める専門能力(法律、政策、倫理など)を、自身の経験に基づき証明する文書。 - PDP(Professional Development Plan)1500字
今後のキャリアでどのように専門能力を発展させるかを示す将来計画。
ChatGPTより
PES 経験レポート
自分が過去2年、どんな業務をしたのか、その業務によって社会にどのような影響を与えたのか、コントリビューションについて戦時でまとめる必要があります。これは必ずしもPCSで書く内容だけを説明する必要はありません。2年間でどれだけ成長したのかを書き記す必要があります。そしてその中の内容とPCSの内容、そしてPDP、将来キャリアをどのように発展させるかと言うことをパラグラフの最後ら辺にまとめる必要があります。なので、3つのレポートを同時並行で内容を考えて書き進めていく必要があります。
PCS 能力評価レポート
このレポートが非常に厄介です。精神を病みます。たったの3000字ですが、書かなければならない内容が濃すぎるので、3000字にまとめるのが難しく、高度な言語能力、ボキャブラリーの多さが求められます。
ここに書いてあるすべての能力を、自分は過去の経験から得ていると言うことをケーススタディーを使って証明しなければなりません。まず、ケーススタディーを注意深く選ぶことが必要な上に、この能力のクライテリアをきちんと理解する必要があります。
また、ガイダンスもたくさんあり、後から他のガイダンスを見つけたりして、散らばっている情報を集めるのも大変でした。RTPIにはこの点を改善してほしいです。
このWebページに基本的には必要なガイダンスは載っていますが資料がありすぎて読むのが大変でした。
PDP 専門性の強化計画
まず、SWOT分析で自分の弱みなどを分析して、それを将来の専門性を伸ばすために、どう強みに変えていくか、どういうアクションを取るかどういうゴールを持っているかと言うことを突き詰めて示す必要がありました。また、アクションは上司などに許可を取ったり、整合性を取らないといけなかったので、その点も時間がかかりました。
今回のサブミッションで良かった事は、リフレクティブジャーナルという2年間の経験を日々記録したものの提出が今年から提出しなくて良くなったことです。これはかなりの負担だったようで、このジャーナルの作成に時間がかかるので、レポートの提出をしなかった人もこれまで多かったようです。ただしこの提出をしなくて良いと言う見直しがあったので、今年からはチャーターのメンバー正会員に応募する人も少し増えたようです。私もその1人でこのリフレクティブジャーナルを提出しなくてよかったのは本当に幸運でした。他のレポート3つだけでも大変だったので、昨年まで提出していた人たちは、本当に大変だったと思います。
そうは言っても、私は2年前からこのレポートたちを少しずつリフレクティブジャーナルと言うものも少しずつ制作していたので、レポートの作成がどのくらいかかったっていうのは正確に言うのは難しいのですが、実際にワードファイルにかき始めたのは今年に入った1月位だったと思うので実質的には形にするまで8ヶ月かかりました。上司とマネージャーに添削を頼んだので、1ヵ月前には既に出来上がっていましたが、そこからまた内容を深掘りしていったりするのに時間がかかりました。
提出日に無事に提出をしました。この3つのレポートだけではなく、他にもコラボレーターやメンターのフォームがあったりと申し込み料として230ポンドを事前に支払って、その証明を一緒に提出しないといけなかったりして、その手続きも大変でした。
この2年間ずっと悩まされていたので、無事に提出できて、本当に今幸せです。と言っても来年帰国するつもりなので、この正会員になっても日本の技術士とは互換性がないので、来年日本の技術士を受けるためにも勉強を始めたいと思っています。
以上、イギリスの都市計画事情MRTPIについてでした。
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