とうとう読み終わってしまった、『羊と鋼の森』



 

『いい本』というのは作品の内容が優れているかどうかより究極的には『自分に合う』かどうか、もっと究極的にいうならば『今の自分』に合うかどうかだと仮定しましょう。

 

その仮定に則っていうならば、本作品はすごくいい本でした。

 

あくまでも自分の場合は、『いい本』と出逢ったら1/3のくらいまでは無我夢中で一気に読んでしまう。

 

そしてそこからは読み終わるのが口惜しい気持ちと共に、ちょびちょびとお酒を舐めるような気持ちで名残惜しみながらの読了へと向かう。

 

 


 

僕はこの作品を読み始める前に、アマゾンのプライムで現在視聴できる新劇場版のエヴァンゲリオン、序・破・Q、そして今年公開されたばかりのシン・エヴァンゲリオンを一気に見ていたこともあってか、本作品の主人公は僕の頭の中では完全にエヴァの主人公である碇シンジで物語が進んだ。

 

脳内で再生される本作品の主人公の姿はもちろん声も碇シンジのそれで、それはすごくマッチしていた。

 

ビジネス本や哲学書のように本には無数のジャンルがあるけれど、今回のようにいわゆるストーリのある『小説』と呼ばれるものを人が読むときには、恐らく誰しもが頭の中ではそれぞれがイメージする映像や声を想像しながら読み進めると思います。

 

本を読みながら、頭の中では映画を楽しんでいるような感じだろうか。

 

今回はその頭の中の『映画』が恐ろしいくらいに完璧だった。

 

作品によっては場面場面が挿絵のように印象的な絵がつながっていくようなときもあるけれど、今回はずーっと頭の中では本当の映画のように背景が変わり続け、そして登場人物が動き、話し続けていった。

 

読中、あまりにも自分の中での『映画』がステキだったので”この作品、自分にでさえこんなに綺麗に頭の中で映像化されるということは、もしかして映画化されているんじゃないか?”と思って調べたら、たしかに映画化されていた。

 

映画の予告動画がyoutubeにあがっていたので、最初の触りだけを見たけれどすぐに慌てて止めた。

 

違う!これじゃない!!!

 

主人公や双子の姿も声も、そして『森』も、僕の頭の中での映画とは違い過ぎた。

 

このまま映画の予告動画を見てしまったら頭の中の僕だけの映画が、実際の映画の登場人物に成り代わってしまいそうで怖かった。

 

それくらい、僕の『映画』は完璧だった。

 

なので、本作品『羊と鋼の森』はこの読了を持って【完】としよう。

 

別に本作品の映画を否定するつもりはないし、映画は映画で好きな人も多くいると思う。

 

ただただ、それくらい、僕の中での『映画』が素晴らしかったというだけで。

 

 


 

読み終わって嬉しかったことが一つ。

 

この作品は、2016年の本屋大賞を受賞した作品でした。

 

図書館で本を借りるときには一度に数冊まとめて借りるが、その際に一冊は歴代の本屋大賞の候補作品から選ぶようにしている。

 

特に意図はなく、ただ単純に選ぶの楽だというのが大きな理由。

 

もったいぶった”らしい”理由をあげるなら、世間一般で『いい本』と呼ばれるものを自分が読んでみて、自分も『いい本だ!』と思いたいと思っている節があるのは否めない。

 

こういう理由で選んだ本なので候補作品であるとは思っていたけれど、まさか大賞作品だったとは。

 

毎度、村上春樹さんの作品が読めずに終わり、今回は特に、過去に楽しく読めたハズの『海辺のカフカ』でさえ最初の10ページほどで挫折したあとだったので、殊更嬉しい。

 

若い時分、天邪鬼的な部分がある人間だったとは思うけれど、歳を数えるごとにみんなが『いい!』と思うものは、素直に自分も『いい!』と思えるようになりたいと思うようになった。

 

特に、本に関しては。

 

 


 

子供の頃から本は読む方ではあったと思うけれど、大人になって定期的に思うのが『なんで本を読むんだろう?』って。

 

学術書や実用書は読むことによってそれが知識に変わることはあるだろうけれど、自分を含め、人はなんで『小説』を読むんだろう?と。

 

(因みに同じようなことを『映画』に関して思うこともあるが・・・)

 

こういうことを思う、思ってしまう所が、自分のことながら天邪鬼っぽいな・・・と思ってしまうのだけど。

 

読み終えた今思うのは、今回みたいに頭の中での自分なりの映画を想像、そして創造し楽しむところなのだろうか?と思ったり。

 

 


 

人類がいつごろから文字を書き始め、読みだしたのか分からないけれど、そしてどこのどなた様がその文字を使って『物語』を作りだしたのかも分からないけれど、すごく原始的でありながら最高のエンターテイメントのひとつだね、読書って。