ここ最近、アタリの読書が続いています。

 

つい先程読み終えた本も頗る佳作でありました。

 

『池波正太郎の食まんだら』


 

著者は池波正太郎氏の書生を10年間務められていた佐藤隆介という文筆家さんで、佐藤氏の作品は本作が初めてでした。

 

生来、食にとんと興味のない人生を送っているのですが、同僚のJさんにオススメのお店を教えてもらい食べてみたところ『確かに、美味い。』という成功体験を重ね、以前よりはほんの少しだけ、食にも興味が出始めた四十の歳。

 

それでも基本的に『食』に関する書籍は読むことなどはなかったのが、大好きな時代小説家・池波正太郎の愛した店となれば話は別だ。

 

僕が個人的に贔屓にしている街、長野県は上田市。

 

最近、上田出身の人に勝手に縁を感じています。

 

上田出身の同僚の方がいると分かれば、これまで話したことがなかったのが嘘のように無理やり話しかけてしまいます。

 

ちょうどその同僚さんは上田の田中駅が地元だと聞き、

 

『はいはいはい、台湾の田中駅と姉妹駅のあの田中駅ですね!全国に名字が田中さんは大勢いるけど、駅名で田中駅というのは全国でそこだけですもんね!』

 

えーーっ、なんで知ってるんですか?

 

喜んでもらえて嬉しかった。

 

今年の1月、上田から小諸に向かう際に寝過ごし戻って、とりあえず電車から飛び降りた駅、田中駅。

 

寝過ごして良かった・・・と約一年越しに思えました。

 

そういえばちょうど昨晩食事をしたMさんも上田出身だったな。

 

『言われてた飯島商店のみすゞ飴、お土産に買ってきましたよ!』と言っていた割には、昨日もらえなかったけど・・・

 

話はそれにそれたが、そんな上田に初めて訪れた際には、もちろん池波正太郎真田太平記館にも足を運んだ。

 

本作品では、池波氏が愛して通った50以上の食事処が東京を中心に紹介されており、その思い出を佐藤氏が各項3ページほどに短くまとめられていて『いいなぁ・・・美味しそうだなぁ・・・』と風呂でヨダレをを垂らしながら・・・というと流石に嘘になるが、ツバを飲み込みながら読み進めたのであります。


因みに、作中には一切食べ物の写真は掲載されておらず、文章のみというのがまた想像を掻き立てるのです。

 

氏が亡くなられたのが今から30年前の1990年、本書が出版されたのが2007年ということで栄枯盛衰の激しい飲食業界、ほとんどのお店はもう畳まれてしまっているか?と思いながら巻末の一覧を見ながら一軒一軒調べると、なんのなんの流石は巨匠の愛した老舗や名店、ほとんどのお店が今でも営業されていました。


 

(さっきまで風呂で読んでいたので、頁下部が濡れていて見苦しいですが・・・)

 

しかも、庶民中の庶民を自負している僕には手も舌も出ないお店も確かに含まれてはいるが、蕎麦や洋食屋などランチだったらなんとか。。。というお店も結構あり、今後予定のない週末は一軒づつ行ってみるか、と新しい楽しみが出来て一人満悦。

 

読んでいて一番行ってみたいと思ったところは・・・ほとんどのお店に行ってみたいと思う魅力的な紹介だったんだけど、一つだけ選ぶとしたら、神田にある『山の上ホテル』というホテルの中にある『天ぷらと和食・山の上』で天ぷらを食べてみたいなぁ。

 

僕はこの山の上ホテルの存在はこの本を読むまで知らなかったのだけれど、戦前に建てられた日本におけるクラシックホテルとして有名らしく、ホテルとしても一度泊まってみたい素敵なホテルです。

 

当時出版社の多かった神田という土地柄、多くの作家が執筆のために軟禁場所としてこのホテルに缶詰にされ『文化人のホテル』と呼ばれていたらしく、三島由紀夫、川端康成、伊集院静、そしてもちろん池波正太郎などが定宿としていた。というWikipediaの説明が一層、山の上ホテルへの思いを強めます。

 

食べログをはじめ、ネットではレストランの情報で溢れている今だからこそ、このような先人の愛したお店を指針に巡るのも一興かと。

 

 


天ぷらと和食 山の上

https://www.yamanoue-hotel.co.jp/restaurant/tenpura/