自宅の本棚というのは、大概の人にとっては読んだ本を保管するスペースなのかもしれないけれど、我が家ではちょっとしたプライベートな本屋も兼ねている。
住む場所を変える度に、少しづつ少しづつ本棚をまた作っていく作業が好きだ。
すぐに読まないにしても、時間がある時に粛々と本を買い重ね、そして本棚にストックしていく。
自宅で暇なときは、そんな本棚を見ながら『次は何を読もうか?』と棚から手に取っては戻したり。
本屋に足を運ばなくとも、本屋にいる気分に浸れる。
しかも、なにせ既に購入済みなので、このエザキ文庫に並んでいる本に限っては、好きな時に無料で読めるのだ。
その意味では、プライベートな本屋というよりは、プライベートな図書館と呼んだ方が正確な表現かもしれないが。
最近では所蔵されている本が少し増えてきたので、図書館を増床して別館を造った。
我が家の図書館は、食器棚を利用している。
如何せん料理を基本しないので、食器類があまりない我が家だ。
ちょうど高さもまさに文庫本をストックする為に作られたがごとく、しかもキッチン側からもリビング側からも開けられる仕様なので、ありがたく両面に本を並べさせてもらう。
別館ができたので本館は少しスペースができたけれども、それでも今年中には再度増築が必要かもしれない。
最近はこのエザキ文庫の品揃えがあまり芳しくなく、どうも利用者のニーズに応えられていないようだったので、先日新たに4冊仕入れてきた。
今回の仕入れは数は少なくとも、満足のいく仕入れだ。
その中でもどれか一冊について書けと言われたら、やはり『サヨナライツカ』だろう。
いつ手に取っても、赤地に這う白い情緒不安定な今にも泣きそうなフォントの題字は変わらない。
20代では池尻に住んでいる時に、30代では香港に住んでいる時に、いつの時代にもいつの間にか自然とその時その時の本棚に収まってきた、そんな本の一冊。
そして、40代になって。
どうだろう。
今の自分はこの本を読めるだろうか?
多分、読めないだろうな・・・
作品の冒頭見開きの2ページ、20年前に多くの日本人の心をギュッと締め付けるように掴んだサヨナライツカで始まる2つの詩を読めば、もうそれで十分だろう。
自宅の本棚というのは、大概の人にとっては読んだ本を保管するスペースなのかもしれないけれど、我が家ではちょっとしたプライベートな本屋も兼ねている。