夜、誰かと食事をするでもなく、一人で電車に乗って家に帰る。
出張から帰ってきてからシャワーだけの日々だったので、帰宅と同時にお風呂にお湯を溜めそして、恵比寿で働くOLよりも、そして丸の内で働くOLよりも、長く、そして長くお風呂に入る。
今日は最初から長風呂にするつもりだったので、特別に『にごり湯』の入浴剤にした。
『にごり湯』の入浴剤は男と女が一緒に風呂に入るときに、女性が恥ずかしくないように・・・という素晴らしい配慮がなされたもので、普段独りで入浴する際には滅多に使わないのだけれども、もはやにごり湯の出番がなさそうな駒沢の風呂なので。
自分の体温より4℃温かい水の塊に右足から入り、肩まで浸かったところで一息ついてページをめくる。
『僕は三十七歳で、そのときボーイング747のシートに座っていた。』
この最初の一文を読むたびに『勝手に座ってろよ』と毎回思ってしまうのは、相当相性が悪いのだろう。
1枚ページをめくって
『『大丈夫です、ありがとう。ちょっと哀しくなっただけだから(It's all right now, thank you. I only felt lonley, you know.)』と僕は言って微笑んだ。』
ここまで読んで、本を閉じてしまう。
何度目の挑戦か分からないほどの『ノルウェイの森』、2ページにて断念。
代わりに大石静さんの『わたしてブスだったの?』を手に再度風呂へ。
数度の追い焚きを経て、一度湯から上がり裸のまま無人のリビングへ行き『大石静』とパソコンで画像検索し、また風呂へ戻る。
絶妙なタイトルに改めて感心しながら、一気に読了。

