今回はミュンヘンで行われているISPOという展示会を見に来ています。

 

通常のファション・ブランドの展示会と違い、ISPOは簡単に言うとアウトドア系のブランド、例えばノース・フェイスとかパタゴニアとか、そんな方向性のブランドが出展している展示会でして。

 

そんなアウトドア・ブランドの集まる展示会だからか、どこそこでよく目にするワードが、これ。

 

『Sustainability』


 

日本語の意味で『持続可能性』とも訳されるこのワードは、ファッション業界だけでなく、今全ての業界を股にかけてヒット・チューンしているキー・ワードじゃないでしょうか。

 

日本とヨーロッパではこういう環境系のアクションに対するそもそもの気合の入れ方が違うのだろうけど、どこか天邪鬼な自分は『あぁ・・・また新しい流行語ができてしまったな。』と思ってしまう。

 

最近ほんとよく耳にするんです、『やっぱ今後のビジネスのポイントはサステナビリティーだよね』って。

 

でも、悲しいかなそういう、サステナブル・サステナビリティーをひとつの『ワード』として捉えてビジネスを行おうとしてる時点でそのビジネスは思いっきり流行・トレンドであって、『持続することが可能』かなんかどうでもいいことに思われているように思えてしまいます。

 

僕がこういうエシカルな言葉、行為に初めて触れたのは『オーガニック・コットン』でした。

 

実は、この分野のことって、これまでもずーっと書こうと思っていて、積もり積もった積年の思いがあるので、もしかしたらバカ長くなるかもなので、何回かに区切って書こうかと思います。

 

割りかしまぢめに書きます、このことについては。

 

今から15年前くらい、担当していたNYのブランドがこのオーガニック・コットンで洋服を作りだしたんです。

 

若かりし僕は思ったよ、オーガニック・コットンって、なに?って。


同じ頃、フェア・トレードって言葉もよく耳にしたね。

 

因みに、今では『オーガニック』って言葉がかなり世間では認知されているので、この『オーガニック・コットン』って言葉も結構一般にも認知されてるんじゃないかなと思います。

 

そこでだ。

 

じゃぁ、『オーガニック・コットンって何?』、『オーガニック・コットンで作られた洋服はどんな風に違うの?』って言われたときに、どれだけの人が理解しているのか。というのが、日本の現状を顕著に表していると思います。

 

僕はファッション業界で働いているので、今回このオーガニック・コットンを例に出しているけど、このオーガニック・コットンに対する認識が、やれオーガニックだ、エシカルだ、フェアトレードだ、で最近ではサステナブルだ、ってことに対する日本の現状に通じていると思います。

 

オーガニック・コットンってのは、製造において農薬を使わないことで、その作られる土地、そこで働く人の環境を良くして、将来的にも継続ができるようにして行きましょうっていうのが基本コンセプトなんです。

 

まさにサステナブルな考えだよね。

 

でも、逆にいうと、それだけよ。

 

ここにNPO法人のオーガニックコットン協会のHPからの抜粋を残します。

 

オーガニック・コットンと普通のコットンの違いについての、説明文ね。

 

 

普通の綿とのちがい

 

”収穫されるコットンそのものには、オーガニック綿でも普通の綿でも変わりはありません。
普通に栽培された綿でも、残留農薬はとても少ないので、収穫されたものから科学的なテストなどでオーガニックかどうかを判別することは不可能です”

 

 

結構、衝撃に思える人、いませんか?

 

オーガニック・コットンだと肌に優しいと思ってたんだけど?

 

とか

 

この風合いはオーガニック・コットンだからだと思ってたんだけど・・・

 

とか

 

普通のコットンの服より安全だからベビー服はオーガニック・コットン製にしてたんだけど・・・

 

 

って人、いると思います。

 

さっき書いた『オーガニック・コットンで作られた洋服はどんな風に違うの?』って質問に対する答えは、『普通のコットンで作られた洋服と特に違わない』です。

 

本来だったらオーガニック・コットンの製造過程の部分にスポットライトを当てて、それがいかにサステナブルなことなんだという『コンセプト』を消費者には伝えていかないといけないのだけれど、結局のところ、オーガニック・コットンで作らた商品が売られる際には

 

『オーガニック・無農薬だから安心、優しい肌触り・風合い』

 

みたいなさ、オーガニック・コットン自体とまったく関係ない言葉で修飾されて売られてるのが日本の現状じゃないかな?

 

こういう風に売り出す売り手が問題ないのか、こういう風に売り出さないと買わない買い手が問題なのかはアレだけど。

 

まぁ、『行為』や『コンセプト』が重視されなきゃいけないところ、結局のところ『言葉』だけが一人歩きして、結果一過性の流行扱いになっちゃっうのが、日本の現状なんじゃないでしょうかねぇ。

 

唯一、日本のこういう環境系のアクションでいうと、スーパーとかでさ、エコバッグというか買い物のときに各自買い物袋を持参するってのは、女性の方を中心に広まってるんじゃないかなぁ。

 

一時期は世のラグジュアリー・ブランドが、もはやエコと呼べるのかどうかも怪しいエコバッグをこぞって作るのが流行って、当時は確実にエコバッグは『トレンド』だったけど、あれから時間はだいぶ経った今でもスーパーではエコバッグを普通に使ってる人が多いってことは、完全に一般生活にまで落ちてるんだろうね。

 

このエコバッグを使うのが認知されてるのって、いわゆる最近また話題沸騰中のプラスティックという観点から見た問題じゃなくて、純粋に家に持って帰って捨てるのが『もったいない』っていう日本人特有の『もったいない精神』と上手くマッチングした好例じゃないでしょうか?

 

やっぱ『もったいない』をベースに環境問題に取り組むのが日本人には合ってるんじゃないかなぁ・・・。

 

今回の『サステナビリティー・サステナブル』。

 

『持続可能性』という単語さえもそれが一瞬の流行として使われて、、、多分使われていくであろうと思うと、その皮肉さとともにちょっと切なくなるよね。

 

これから5年後、10年後、どれだけの会社がサステナビリティーに関して真面目に取り組んでいるんだろうか。