オフィスを出たあとはどこにも立ち寄らず、足早に渋谷駅の田園都市線のホームへ向かいました。

 

平日の渋谷は見慣れた風景だけど、土日の渋谷は実はあまり見たことがないかもな。

 

神南エリアはもうダメだ、とちょくちょく耳にするようになったここ最近だけど、土日はまだまだ全然若い人で溢れていました。

 

改札を超え、階段を降り、ホームに並んで電車が入線するのをお行儀よく待ちます。

 

周りの人は気づいてないだろうけど、僕の耳の中では木村カエラさんのマジック・ミュージックが爆発しています。

 

最初に入線してきたのは、急行でした。

 

僕が住む駒澤大学には止まらない急行に飛び乗って、どうしようか悩んでいたけど、決めました。

 

今夜はやっぱり漫画喫茶に行こう、と。

 

渋谷を出て、最初に停車する三軒茶屋にて下車。

 

この街には、僕が上京してからかれこれ10数年足繁く通うマンガ喫茶があります。

 

特に漫画が好きなわけではないけれど、休みの日に何もせず徒然と家にいることが何か世間様に対して悪いことをしているように感じてしまうとき、そんなときに僕はこの三茶の漫喫にエスケープしてしまう。

 

普段は特段読みたい漫画もないので毎回来るたびに『サンクチュアリ』を読むばかりだけど、今夜は違います。

 

そう、高木さんを読もう!と。

 

三茶の街を抜けて、とことこと歩いて到着。


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とりあえずいつもの三時間パックで店内の流れをうかがうことにしました。

 

受付でカードを提出すると、とても感じの良い店員さんが『ただいま5時間でも3時間パックと同じ料金ですが、いかがなされます?』と。

 

デフレスパイラルは、ここ三茶の漫喫にまで。

 

もちろん5時間でお願いしました。

 

入店伝票ももらい自分の席に向かう前に、スタッフのお姉さんに

 

『わがまま上手の高木さんって本、ありますか?』

 

と確認したところ、パソコソをカタカタと叩いて調べてくださって、

 

『あぁ・・・すみません、当店にはないみたいです・・・』

 

と。

 

がーん。

 

せっかく5時間もいれるのに、高木さんが読めないんじゃ意味ないじゃん・・・

 

といあえずドリンクバーで黙ってコーラを注ぎ、ピット・イン。


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どうしよう・・・また、サンクチュアリでも読もうかな・・・とたたみ一畳くらいのスペースで途方に暮れていたら、外からさっきのスタッフのお姉さんが『30番のお客様!』とドアの向こう側から声をかけてきました。

 

どうしたんだろう?とドアを開けてみると、お姉さんの手にあったのは…


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高木さん!!!


『お客様が探されていたのは、これですか?』

 

と。

 

そうそう、これですこれです!

 

マンモスうれP。

 

高木さんを渡されて、あっ・・・て、僕は気づいてしまいました。

 

『からかい上手の』高木さん、だった・・・って。

 

僕、受付で『わがまま上手の』高木さんで検索してもらってたよ・・・。

 

マンモスはずかP。

 

高木さんが『わがまま』であって欲しいのは、僕の個人的な願望でした。

 

隣の人が頼んでたカツカレーがデリバリーされて食べだしたよ・・・壁越しにすごいいい匂いがしてくる。

 

なんか俺も頼もうかな・・・ここ、漫画喫茶なのに多分ちゃんとした厨房があって、作ってるのよ、たぶん。

 

すごい美味しいもん、知ってる知ってる。

 

とりあえず、高木さん、読も。

 

紙ベースで読むの、初めてです。

 

無音の空間にスプーンと皿がぶつかる音が響きます。

 

その音が、土曜の夜に漫画喫茶で過ごしているのが僕だけじゃないことを知らせてくれます。

 

スプーンと皿がぶつかる音。

 

それが今夜のマイナートランキライザー。


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