ナイト・フライトに飛び乗って向かった先は、重慶。

この重慶、中国語読みでチョンキンという街に昔から憧れのような思いを持っていた。

僕がこの重慶という街…というよりも言葉を知ったのは、後に僕を香港に向かわせた映画『恋する惑星』。

20歳の頃、僕がサンディエゴに留学してたときに、友人から『天使の涙』と『恋する惑星』という香港映画界の鬼才王家衛の二作品を借りて見た時の衝撃は、もはやショックだった。

当時、オシャレ系映画といえば、タランティーノさんの作品やトレインスポッティングなど、いうても欧米の『オシャレ』が幅を利かせてた自分の中の映画史で、この王家衛さんの二作品は冗談抜きで自分の中の『カッコいい』価値観をぶち壊してくれた。

なにこれ…なにこの街…って。

アジアなのに、めちゃカッコいいじゃん…って。

その数年後、社会人になった僕は満を持して初めて香港に旅行で足を踏み入れた。

『恋する惑星』というのは邦題で(この邦題をつけた人は本当に素晴らしい)、原題は『重慶森林』、英題が『Chungking Express』だった。

舞台は香港の繁華街のど真ん中に今も現存する重慶大廈(重慶マンション)で、この映画を初めて見た時からずっとこの『重慶(チャンキン)』という言葉が僕の中にはあった。

因みにこの重慶マンションは、香港に住んでいる人にはインド料理が激安で激ウマなお店がたくさんある建物として、一般旅行客には両替屋のレートが一番いい場所として、バックパッカーにとっては沢木耕太郎さんが『深夜特急』で旅の最初に泊まる安宿の集まる聖地のような存在として幅広く知られている。

重慶という言葉を知って18年後。

恋する惑星・香港・重慶。

これまで点と点だったのが、やっと繋がった。

重慶、まだ夜の顔しか分からないけれど、この街はとてつもなくコケティッシュな魅力にあふれている気がする。


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