僕が香港でヒマをもてあそんでいることを見透かしてかどうか知らないけれど、ここ最近の僕の仕事はBOSSから『あれ作って』『これ作って』と言われたものを、中国の工場で作るということをやっている。

ただ、BOSSのいう『あれ』や『これ』ってのは、基本的に僕たちが取引していないモノなので、まずは工場を探すところから始まる。

とりあえずインターネッツの海に潜り、手当たり次第検索して、その中からセンスの良さそうなHPの会社に手当たり次第、突撃電話をする。

最初は突撃メールでもいいんだけど、仕事が始まって万が一非常事態宣言状態になったとき、僕が唯一かろうじて話せる英語で先方の担当者と直接電話で話せるかどうかというのは死活問題だ。

あるあるなのが、ずーっとメールでやりとりしてて特に問題なかったのが、問題が発生したときに大至急電話したら『わたし、英語、話せないある。メールしてある。』のパターソだ。

このシチュエーションは、絶対避けないといけない。

そんなこんなでアレやコレを作っているのだけれど、その中で、『ハンガー』を作れ!との指令がでていた。

僕は、値段を比べる為にも中国の会社だけでなく香港の会社も含めて何箇所か突撃電話をして、何社かから見積もりを取ったんだけど、その中で、HPのセンスが良くて、値段も抜群に安い。

同じ中国製のハンガーでも、間に日本の会社を通すのより1/3の値段だ。

しかも何より、担当者が僕以上に英語がうまくて、仕事が早い。

そんな会社があった。

しかも、その会社の住所を調べたら『桂林』。

あの水墨画で描かれたような幻想的な風景の桂林だ。


{841B239F-4155-42BD-8836-45A98FD7E310:01}


僕は、早速その会社にサンプルを作ってください、と先方の担当者Bさんにメールをした。

そのとき、僕はちょうど中国を旅行してるときで、麗江にいた。

なのでBさんに正直に想いを伝えた。

『私は今、中国を旅しています。先日まで昆明にいて、今麗江にきています。これから、シャングリラ・成都と周る予定です。中国にはとても綺麗な風景がたくさんあり、感動しています。そんな中、残念ながら今回桂林を周ることが出来ません。ただ、桂林の風景は日本のガイドブックに載るくらい、とても幻想的で有名です。ぜひ、仕事で桂林に行きたいと思っています。桂林に仕事で行き、Bさんと商談をして、そのついでにあの有名な風景を見に行きたい。それには、今回お願いするハンガーのサンプルを完成度の高いレベルで作ってもらわないといけません。サンプルが日本にいるBOSSに認めてもらえたら、実際の発注をする際には挨拶にいきます。どうか僕にBさんと実際会って挨拶をして仕事が始められるように、ぜひともクオリティーの高いサンプルを作ってください。そうしたら、僕も桂林のあの風景をみる機会が出来て、とてもハッピーです。』

かなり熱い想いを込めた。

やはり仕事は公私混同の時が一番気持ちが前面にでて、いい結果が生まれる。

特に人民と仕事をする時は、思いっきり深く相手の懐に飛び込まなければいけない。

Bさんも『あなたが桂林に来れるように頑張っていいサンプルを作ります!』とはりきりモードで頼もしい。

そして本日、サンプルが出来上がって香港のオフィスに届いた。

これを持って、来週は東京でBOSSとミーティングだ。

ワクワクしながらダンボールのパッキンを開けたら・・・

素晴らしいっ。


{32893778-DB00-41F0-A5FA-86E51D1D6E4D:01}


メタルパーツのサビ加工も完璧だ。

全部で数種類のハンガーのサンプルを依頼していたけど、全てが予想していた以上の完成度でちょっと逆に焦る。

BOSSに取り急ぎ報告するためにハンガーを並べて写真を撮る準備をする。

もはやBOSSが

『カブトムシくん、やるねー!』という顔しか思い浮かばない。

その時、アイフォンのカメラ越しに並べたハンガーを見てて、

『ちょっと待てよ・・・』

と。

とゆうか、一気に寒気がした・・・。

恐る恐る自分がBさんにメールで送った指示書を見て、一気にたぎった。

色が・・・違う・・・

今回はBさんがやってモーター(株)を設立してしまった。

これがいわゆる一つの非常事態宣言状態だ。

こんな時に、いちいち悠長にメールなんかしていられないので、ソッコーでBさんに電話だ。

『Bさん、サンプル届きました。クオリティー、やべぇーっす。まぢリスペクト。ただ・・・色が違います・・・。何月何日にメールした指示書みてください。色、ブラックじゃなくて、グレーです・・・』

Bさんは最初『いやいやいや、そんなはずないでしょう!?』みたいな感じだったけど、メールを確認したらしく、若干無言になってしまう・・・

無言のあとにBさんが発した最初の言葉は

『グレーよりブラックの方が良くない?』

・・・・・。

分かるよぉ、その気持ち。

僕も個人的にはブラックにゴールド、カッコイイと思うし・・・。

ただ、空の色を青と決めたのは神様であって、いくら僕が明日から空は青じゃなくて緑がいいと思っても、それはどうしようもないことだ。

もはや明日から空の色を緑に変えられるパワーを僕が持ってたら、正直、こんなハンガーをせこせこ作ったりなんかしてないだろう、実際。

それと同じでハンガーの色を決めるのは、神様でもBさんでも僕でも僕の好きな人でもなく、my BOSS in Tokyoである事実を再度Bさんに理解してもらう。

僕が東京でBOSSと会うのは一週間後なので、ここでグダグダBさんを責めてもしょうがない。

とりあえず今週中にマッハ2000の速さでグレーにゴールドのプリントを入れた木の部分だけでも作ってもらうことをお願いして、電話を切った。

あぁ・・・

桂林が・・・

桂林が遠のいていく・・・