脳腫瘍摘出手術を受ける前の術前説明。
自分の事なのにどこか他人事のような、現実味のない感覚があったのは確かだった。
説明内容を全部は覚えていないけど、
“早ければ10日で退院出来る”
“社会復帰出来る”というワードは強烈に覚えていて、
まさかこんな…現状のような事になるとは本当に少しも、これっぽっちも考えなかった。
後遺症云々の可能性が、という内容も無かった気がする。
あれば、いくら何でも覚えていない訳がない。
手術に伴うリスクを説明されたのは覚えている。頭蓋骨内の髄液が漏れ出ないように云々カンヌン…という内容は覚えているし。
手術からだいぶ経って、
それこそ数年越しに2代目担当医に聞いてみたのはいつだったか。
「そんな事、いくら◯◯先生でも言わないだろう…。」みたいな、ん?という内容であったり、
「この腫瘍の場所なら後遺症は免れない。」とか、更に ん?な事を耳にしたりで、疑念が疑惑に変わっていくような感じがあった。
手術をした時の担当、その後の担当……と、今では4人目の担当医。
別にもう誰が担当だって何だっていいけど。
3人目の担当医の時だったか、
「この場所の腫瘍で、早ければ10日で退院出来るとか社会復帰出来るとか、先生だったら言いますか?」と聞いたら、
“自分なら言いませんね、社会復帰は難しいでしょうし…。”と言われた。
職を得られた私は社会復帰出来たと言えるのかね…一応ワーママではあるけど。
体感的には微妙だけどなぁ
そうなると、やっぱり最初の担当は私にとって当たりが悪かったのだろうと思う。
そして、私の術後の年度替わりで異動になり術後間もなく担当医が変わった事にも疑念を持ってしまった。
お前なんかやった…?と。
たまたまだったのかもしれないけど…。
今更何を思ったところでもう何がどうなる訳でもなく、単なるタラレバで
しょーもない事ではある。
でも考えてしまう。
他院だったら、
他の医師だったら…?と。
初めての病気で訳も分からず、
脳の手術なんぞ、
説明を受けても何を聞けばいいのかもわからなかったと思うと、
音声を録っておけば良かった…と思った。医師の粗探し目的ではなく、自分の心づもりの為に。
正直、
一度説明されたってよくわからないものだと思う。
自分の事であってもどこか現実味はないし、フワフワとした不安だけがあるというか…。
だから何を質問したいのかもわからないような。イメージがつかないものに質問は浮かんでこないし。
私は本当に、後遺症が…なんて何故か考えなかったから、
現状のようになった事への心の準備も何もなく、正直訳がわからなかった。
特に術後は何をどう受け止めどう過ごしていたのかがよくわからない。
どんな経過を辿ったのか…。
目が覚めればとにかく嘔吐、
頭の位置を少し変えればとんでもない回転性のめまいに見舞われ、
身体は動くけどバランスはうまくとれずに思うように扱えない、
半身は軽く麻痺して思うように細かくは動かせないし震えたりもする、
顔面神経麻痺をいつ自覚したのかも覚えていないけど、口をゆすぐのが上手く出来なくて歯磨きの時にガーグルにペッとする前、
ブクブクしたくても麻痺側からピューだらだら…と水が出てしまったのは覚えている。
トイレも入浴も要介助、
トイレは男性看護師が付き添う事もあって、下着をおろし便座に座るまでを見守られた。
さすがに入浴は女性だったけど、それでも全裸を披露せねばならなかった。
それから、
高齢者に混じってのリハビリ、
どこまでも思うようにいかない身体…、
10日どころじゃ済まなかった入院生活…全てが想定外過ぎて、
身構える事も出来ずに迎えてしまった事態だったのもあって、
情けないやら屈辱感やらが一気に押し寄せて、もうとんでもなかった。
これでどう社会復帰出来るんだよ…、
何が早ければ10日で退院だよ…と、
さすがにワナワナした。
一体何をどう受け止めていったのか、
精神面がどうだったのか、ほぼ覚えていないから自分の事ながら本当にわからないけど、
下手な事は言わないで欲しかったし、
後遺症の可能性も示しておいて欲しかった。他の医師もなんか言わんかったのか?
同じように思ってたのか?
聞けば術前に不安で支配されてしまっただろうけど、知っていれば少しは身構えられたと思う。きっとそれが少しは気持ちのクッションにもなっただろうに。
その後遺症の可能性から手術を拒否する選択肢も母親であった私にはなかったのだけど。
でも後遺症の可能性の示しもなく、
1つでも大変な後遺症を複数抱える状況で、
事前になにも身構えられなかった事もあったし、
とにかくメンタルはズタズタのボロボロだった。酷かった。
とてもとても酷かった。
気持ち悪いぐらいメソメソして、
本当に気持ち悪い自分だった。
思い出すのも気持ち悪いぐらいに、
私史上、最上級の気持ち悪さだった。
ぶん殴りたくなる位
でも、仕方なかったとも思う。
そりゃ無理もないよね…と。
何だか未だにスッキリしない、
疑惑が残ったままな感じ。
もう何がどうなる訳でもないのに、
未だ…疑惑が膨らむ。
当たりが悪かったんだな〜、
あーぁ。と思うしかないし、
誰が担当だって同じだったのかもしれない…??
いや、気持ちは違っただろうし、
それは大きな事だったからやっぱり担当医の当たりは悪かったのだろう。
呼吸停止で見つかる事が多い腫瘍の位置だったのに、頭痛始まりで受診出来たのさ運が良かったのか、
今生きている事は運が良かったからなのか、
いや、本当に運が良ければ脳腫瘍にはならないんじゃね?しかも複数の後遺症ってむしろ運悪くね?とか考えたり、
色んな事で思考がグルグル。
暇か?
暇なのか自分?と思ったりもするけど、やっぱりどうにもスッキリ出来ず、
でも解消出来る事はなく、思考がグルグルするのみ。
言った言わないも今更わからないし、
複数の後遺症が治る訳でもない。
そんなのわかっちゃいるけど、
無性に腹立たしくなる時もある。
怒りの持っていきようがないというか、命と引き換えにこれまでをほぼ失ったような、そんな感覚。
退院してからがまた屈辱やらなにやらネガティブフルコースの始まりだったが…。
でも、ある意味あらゆる事への荒手の断捨離だったのかも…?
こうにまでならなければわからなかった事をわかる為の荒療治だったのかも?なんて考える時もある。
でも、何故に私が?
他にオカシナ奴らはたくさん居て、
のうのうと生きているのに?
なんて考える時もある。
こんな、考えても仕方ない事を考えられる元気と時間があるんか…と、
自分をアホらしくも感じたり。
でもまぁ、考えるのは悪い事ではないだろうし、ボーっと生きるよりはいいか。
ま、いっか。
大抵の事は目くそ鼻くそ以下だし。
人間界のルールを守りつつ、
自分にとって何が大事でどうしたいかを大切にしていければ、
あとは大方…ま、いっかでいいや…
なんて思うようになったのは、
脳腫瘍からの贈り物だったのだろうか。ごめんこうむる…。
お読み頂いたお方、
長い文を…読んで下さってありがとうございました
ま、いっか!と進むのだ。