第1話「登場! 謎の三姉妹」(1986年10月30日)

 闇空に、赤い星が妖しく光っている。

 陰星である。

 
 と、地面からゾンビのような不気味な手が次々と飛び出し、その星を掴むように蠢く。

 とんと、ホラー映画のような幕開けである。

 地中から出て来た異様な風体の男たちは、群れのように整然と野山を駆ける。

 何かいいこと(例・給食にプリンがついてきた)でもあったのか、意味もなく飛んだり跳ねたり泳いだり、大はしゃぎの男たち。

 最後は、崖の上に松明を持って立ち並び、眼下で護摩壇を焚いて調伏を行う修験者にあわせて「アービラウンケンソワカー」と言う、この後、劇中でイヤになるほど聞かされることになるベタな真言を唱えるのだった。

 果心居士の声「我らが星・陰星が180年の眠りから醒め、遂に我らの前に輝き始めた。陰星輝く時、天下麻のごとく乱れる。いまこそ我ら陰に忍びしものたちが天下を取るときぞ。世紀末は近い。走れ、陰たちよ」

 おどろおどろしい幕開けから一転、

 
 日立のCMのように牧歌的な風景が映し出される。

 ここは九州は宮崎の某所。

 野原に聳える大樹の下に、老けた高校生たちが人待ち顔で集まっている。

 
 部下「逃げたとやなか、しょせん、おなごですばい、西郷どん」
 西郷「おんなじゃちゅうて、油断しちゃなりもはん」

 んで、そのリーダーと言うのが、たどたどしい鹿児島弁を操る、西郷さんのパチモンみたいなふざけたキャラなのだった。

 冗談の通じない人は、この段階でもうチャンネルを変えると思う。

 かく言う管理人も、正直ちょっとヤになった。

 それはともかく、彼らが待つ人物は、とっくの昔に木の上に登っていたのだった。

 そこから飛び降りると、不意を突いて西郷どんの頭を木の棒で一撃。

 仰向けにぶっ倒れる西郷どん。

 
 唯「長谷川高校大日村分校スケバン風間唯!! 西南番長連合総番・西郷隆討ち取った!!」

 高らかに勝ち名乗りを上げる唯だったが、総番だけあって、西郷どんはむっくりと起き上がる。

 西郷「なんじゃこのーっ!!」

 その後、色々あって、

 
 唯は、あらかじめ用意していた打ち上げ花火の竹筒に火をつけ、バズーカ砲のように発射し、敵をまとめて片付ける。

 爆死した次回作「少女コマンドーいづみ」のバズーカ砲は、これが元ネタかも。

 OP後、真言宗・遠心寺。

 
 唯「おろせーっ、クソ坊主ーっ!!」

 境内の奥にある、亭々と聳える大木にロープで縛られた唯が吊り下げられてる。

 これを女優さん本人が演じているのがえらい。

 
 帯庵「カーッ!!」

 唯の祖父・帯庵が、喚き立てる唯を一喝する。

 演じるのは、子供はワンパクでも良いから逞しく育って欲しい田中浩さん。

 帯庵「この、ばかたれが、一発5万円の花火を盗み出して喧嘩に使うとは何事か」
 唯「じゃけんど、一発で番長連合のやつらば吹き飛ばしたとよ、じいちゃん」
 帯庵「たわけ!! 喧嘩ばしちゃいかんと、なんべん言うたらわかるとかーっ!!」
 唯「じゃけんどー」
 帯庵「今夜はメシ抜きじゃ、ようと反省するまでそこにぷらさがっちょれ」

 全く反省の色を見せない唯に、帯庵は厳しく言い渡して立ち去る。

 その後、本堂で誦経していた帯庵の前に、シリーズには欠かせないあのお方があらわれる。

 
 暗闇指令「お久しぶりです、帯庵殿」
 帯庵「やはりあらわれましたか、暗闇殿」
 暗闇指令「今、世間の人々が計り知れないところで恐ろしい何かが動き出しております。やがて日本を、いや世界をも滅ぼそうとする恐ろしい何かが……力を貸していただけませんか、帯庵殿」
 帯庵「三日、三日待ってつかぁさい、三日後には唯を東京へ」
 暗闇指令「かたじけない」

 深々と頭を下げる暗闇指令。

 しかし、元々陰と戦ってきたのは帯庵たち風魔一族なのだから、暗闇指令のほうから頼みに来るというのも変な話なんだけどね。

 その後、帯庵がいささかあぶなっかしい手付きで九字の印を結んでいると、自力で縄を解いた唯が飛び込んでくる。

 帯庵はいきなり唯を寺の裏手にある池に放り込む。

 帯庵「唯、おまんは東京へ行け」
 唯「なんでやーっ、なんでわちが東京なんか行かにゃいかんとやーっ!!」
 帯庵「東京にはお前の父ちゃんと姉ちゃんたちがおるんじゃ」
 唯「そんげなこと嘘じゃ、わしはこん寺の前に捨てられちょった捨て子じゃ。親も兄弟もおるわけがねえ」
 帯庵「せからしか、おるっちゅうたらおるんじゃ、ええな、お前は東京へ行け、行くちゅうまでこん池から出さんぞ」

 唯の台詞では、帯庵は実の祖父ではないようにも聞こえるが、帯庵が父親のことを追及されないために、敢えてそんな嘘を教え込んでいたのだろうか?

 もっとも、これ以降、その辺のことを唯が問い質すことはない。

 唯は夜になるまで池の中に居続けるが、結局根負けして「東京に行く」と言う。

 唯(わちにとうちゃんがおったなんて……わちの身寄りは母ちゃんのこの形見の雛人形だけと思うちょったとに……)

 その後、終盤まで唯を悩ますことになる、いわくつきの雛人形を見詰める唯。

 一方、帯庵は夜空に輝く陰星を見上げ、

 帯庵「いよいよおそれていたときがきた。あの星が、お前の運命を変えさせようとしちょる。お前はこれから恐ろしい戦いに挑んでゆかねばならんのじゃ」

 孫のために手を合わせて祈るのだった。

 CM後、カメラは一旦東京の風間家へ飛ぶ。

 
 結花「行って来ます」

 仏壇に手を合わせ、亡き母親に挨拶する結花。

 そこへ由真が降りてきて、

 由真「なんで起こしてくんなかったんだよ」
 結花「起こしたわよ、何度も」
 由真「チェッ、朝飯食えなかったじゃないかぁ」

 ぶつぶつ言いながら、セーラー服の下のパジャマを脱ぎ捨てる由真。

 ここはちゃんとまずパジャマを脱いで、それからスカートを履いて欲しかったですね。

 だいたい、急いでるからって、パジャマの上からスカートを履く奴ぁいねえよ。

 そのまま学校に行こうとする由真を、結花が鋭く呼び止める。

 結花「由真、母さんに行って来ます、は?」
 由真「……」

 由真、仏壇のところに行き、立ったままお鈴を三回叩き、左手だけで礼をして済まそうとするが、スケバンなのに真面目な結花に押し戻され、無理やり座らせされる。

 
 小太郎「こら、結花、由真、お前たちに話がある」

 と、ダイニングから父・小太郎が顔を出して言う。

 そう、管理人もうっかりしていたが、この時点ではまだ小太郎が存命で、二人と一緒に暮らしていたのだった。

 
 小太郎「今まで黙っていたが、実はお前たちには妹がいる」
 結花「えっ」
 由真「まーた、朝っぱらから冗談辞めろよ」
 小太郎「冗談ではないっ、わけがあって、いままで九州で育てられていたんだが、今度上京してくることになった」
 結花「ちょっと待ってよ、いきなりそんなこと言われても困るわ」
 小太郎「そうかもしれん」

 いや、小太郎さん、「そうかもしれん」じゃなくて……

 なんでそんな重大な告白を、他人事みたいな顔でしれっと出来るの?

 小太郎「だが、事実なのだ」
 由真「まさか腹違いの子って言うんじゃねえだろうな」
 小太郎「正真正銘、お父さんとお母さんの子だ」
 結花「どういうこと」
 小太郎「ワケはいずれ話す、だから今は黙って妹を迎えてやってくれないか」

 だが、無論、多感な女子高生が、朝飯前にそんなこと言われて「はい、よろこんで!!」などと応じるはずがなく、

 由真「由真はやだよ、絶対にやだ、ふざけんじゃねえよ」
 結花「最低!!」

 二人は父親に軽蔑の眼差しを向けてさっさと学校に行ってしまう。

 再び、宮崎。

 唯がひとりで駅に行くと、あの西郷軍団が大挙してやってくる。

 仕返しに来たのかと警戒する唯だったが、

 
 西郷「おまんの根性に惚れましたばーい、東京へ行っても立派に番を張ってほしかですたい。これはおいどんからの選別ですばい、受け取ってください」

 「昨日の強敵は今日のトモ」と言う奴で、西郷たちは唯を見送りに来たのであった。

 
 だが、駅のホームには、彼らの様子を伺っている謎めいた女の姿があった。

 後に唯の協力者となる礼亜である。

 演じるのは、ED主題歌も歌っている福永恵規(さとみ)さん。

 唯「ありがとう、わちは東京に行って日本一のスケバンになってみせます」

 自分を待ち受けている過酷な運命も知らずに暢気に宣言する唯であった。

 さて、東京へはブルートレイン富士で向かうことになるが、同じ車両に乗り込んだ礼亜は、スケバン刑事の必須アイテム、金属製のヨーヨーを唯の前に投げてやる。

 唯「なんじゃろか……」

 列車は無事に東京駅に着く。

 結局、父親に説き伏せられたのだろう、結花と由真が改札の前で待っていた。

 
 唯「こんにちはー、わー、二人ともわちとおんなじセーラー服じゃあ」

 唯、帯庵から渡された二人の写真と見比べ、

 唯「こっちが結花姉ちゃん、こっちが由真姉ちゃん!!」

 興奮気味に叫ぶ唯だったが、いきなり由真にビンタされる。


 唯「こらぁ、なんで人のこといきなり叩くとやー?」
 由真「ふんっ、鼻っ柱は強そうだな、いいか、人のこと姉ちゃんなんて気安く呼ぶんじゃないよっ!! お前を妹って認めたわけじゃないんだ」
 唯「なんてやーっ!!」

 会う早々取っ組み合いの喧嘩になりかけるが、結花が唯の腕を掴み、

 結花「さあ、ついてきなさい」

 
 不良「風間さんだね、こないだはうちの若いもんが世話になったそうで、今日はその礼に来たんだ」

 だが、家に向かう途中、高架下で不良たちに因縁をつけられる。

 結花も由真も喜んで受けて立とうとするが、唯が前に出て、

 
 唯「待った、待った、待った、この喧嘩、わちがこうた!!」
 不良「なんだ、てめえは」
 唯「風間結花、風間由真の妹で九州にこの人ありと言われた大スケバン・風間唯じゃ!!」

 唯が張り切って名乗りを上げると、不良たちがゲラゲラ笑い出す。

 結花「子供は引っ込んでなさい」
 由真「待ちなよ、姉貴、そいつにやらせてみようよ」
 結花「……」
 唯「やるやるやる!!」

 唯はその場で荷物をほどくと、前夜、帯庵から贈られたプロテクターを装着する。

 唯、山奥の生活で鍛えた野生的な身体能力で不良たちを翻弄するが、肝心のヨーヨーがないので決定力に欠け、ひたすら逃げ回る。

 由真「ったく、だせえなぁ」
 結花「あれじゃ山猿ね」

 唯、結局捕まるが、すかさず結花が折鶴を投げて唯を助ける。

 
 結花「風間結花、人呼んで折鶴の結花」

 
 由真「風間由真、またの名をリリアンの由真!!」

 唯のときには大笑いしたのに、なんで今度は笑わないのか、間尺に合わない気もするが、とにかくバトルスタート。

 しかし、いまさらだが、ぶっ飛んだ武器である。

 ま、リリアン棒は、それだけで武器(凶器?)になるからまだ分かるけど、金属製の折鶴なんて、一体何処から湧いた発想なのか?

 
 唯「つよかー、東京のスケバンて、こんげにつよかとは知らんかったわ」

 不良たちをぶちのめして颯爽と立ち去る二人を、しきりに感心しながら追いかける唯。

 そんな予期せぬイベントが起きたせいで、三人が家の近くまで来た時には、すでに夜になっていた。

 由真「あれえ、おやじのやつ、手なんか振ってやがる」

 
 見れば確かに、小太郎が2階のベランダに立ってこちらに手を振っているのが見えた。

 ストーリーの都合とは言え、めちゃくちゃ不自然な行為&動きである。

 いつ三人が戻ってくるか知らないのに、ベランダに立ってるか?

 待ち遠しいのなら、玄関の外で待つだろう。

 
 唯「……」

 初めて父親の姿をその目で見て、どんぐり眼を大きく見開く唯。

 唯「あれがとうちゃんね」
 結花「本人はそう言ってるわよ」
 由真「さあ、白黒はっきりさせようぜ」
 小太郎「唯!!」
 唯「父ちゃん!!」

 
 唯「父ちゃーん」

 唯を先頭に、三人が家に向かって歩き出したその時、

 
 いきなりドカン!!!!

 いやぁ、何度見ても凄いシーンだ。

 結花「父さん!!」
 由真「うそぉ」

 炎に包まれる自宅を前に、茫然と立ち尽くす三人。

 そして、唯の額には、謎の梵字が浮かび上がる。

 連続ドラマの初回としては、これ以上ないツカミではあった。