なんというか、

あっというま、

というには帯に短したすきに長し、

で、

区切りっていうのは、しんみりしたり、のんのんとしたりするのもわるくない、

という祖父の声が思い出されるけれども、

式典となるとそうともいかず、

わたしにも大好きな友人、

先生方、

あえて秩序を乱して這った木の根っこ、

着物、

とかがあるので、

卒業式にもぷかぷかして出ることができる。



ぷかぷかするのは、

はじめて穿いた袴のせいではなくて、

(大学に通っているあいだ、ずいぶんと着物にはお世話になったし、大好きで)

すこしの人酔いと、

とうとう「友人」と呼べるようになった5人が、

数時間後にはとおく散り散りになってしまうこと、

幸運にもわたしは、

ほとんどかわらない地点にピンをおけることの、

あまりにも具合のわるいことに、

おとなのわたしがついていけないからだと気づいた。



こどものわたしはそんなふうではなくて、

大好きな紫色の振袖を、

きらきら見おろしながら、

あ、

梅が咲いている、

西のほうにはもう、桜、

友達の歯並び、

美しいなあ、

筆を振り回しながら、

人差し指と中指だけ、

べこべこお辞儀している。





そのまま、

結局ぷかぷかしたまま、

日付がかわってしまって、

たとう紙をほどいて、

着物をハンガーに掛けて、

いただいたお花を水揚げして、

リボンを解いて、

じゃあっと、

あらゆる、おそろしい妄想をして、

15秒ごとにフラッシュする言葉の残像、

授業の湿度、

なんかの諸々を捉えて、

その谷を逆走してみて、

一音、一音、でてくるまでの、

粒々の束、

みたいなのが、

ピアスの横で裂けて、

爆音を立てて、

彼女の顔、

彼の顔、

ペンの動き、

先生の腕組み、

レジュメの文字、

視線と視線、

なんかも、

ありありと、

ファイルのままに思い出されて、

ああそうか、

もっと愛しておかないと、

いけなかった、

きちんとお礼もいわずに、

時間に重石をおいた。



一生懸命なにか伝えようとしても、

言葉がじょうずにつかえないのでは、

無粋かもしれないのだけれども、

どうしても心残りなのは、

最後のゼミで、

あんなにもたくさんの人々に知り合えたのに、

きちんと1人1人をhugせずに、

気持ちも伝えずにいたことだったかもしれなくて、

いっぽう、

言葉のゼミなので、

思案に暮れてしまった自分がまた情けないのだった。



ハイセンスなギフトには、

わたしの大好きな蝶々が、

アゲハがたくさん宿っていて、

ペンにはプリズムみたいなのがあって、

アゲハの青、

というより藍色、

が鋭くて、

使うまえに涙でよれよれにならないようにして、

そうっと、

スリーブにしまった。

―アゲハを解き放ってあげればよかった?





友人にしたみたいに、

その場で直接はいえなかったけれども、

みなさま、

ほんとうにありがとうございました。

お会いしてもわたしが泣かないようになったら、

一緒においしいパフェでも。



ほんとうにありがとう。

大好き。

はべらせた言葉たちとひっくるめて。





Swallowtail Butterfly ~あいのうた~/ YEN TOWN BAND
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