このブログは、もともとso-netブログで『床花』という読書感想ブログを2004年からのんびりと書いておりまして、そこの記事を引っ越し(完全に引っ越しするかどうかはまだ未定ですが)がてら、アメブロに移行したものです。なので『雨の夜に』というサブタイトル??をつけてます。

読書感想の記事に関してはso-netブログと並行して同じものを記載していくと思いますが、日記的な記事に関しては変えて行くつもりです。(so-netの方の日記記事はこっちに移行してませんし)

基本、Twitterとかでお気楽につぶやくのが日課なので、ブログの更新はかなりのマイペースになるかと思いますが、よろしくお願いします。
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あらすじ


フランス人の夫とシンガポールで暮らす安樹子の元へ、友人が殺されたとの訃報が届く。彼女は安樹子の友人でもあり、かつて安樹子が関係を持っていた男性の妻でもあった。彼女の死を知らせるために、安樹子は彼に会いに出かける...

感想


端から見れば、裕福で美しく自由に生きている人たちに見える登場人物たちが皆、心の中に暗い感情を隠し持っていて、それが交錯する様は、南国で見るような鮮やかな色彩の美しい織物のようで、でも決して手に取りたくはない呪われた宝石のように私を魅了しました。

森さんの文体は、生々しい感情をリアルに描き出していても、どこかファンタジックで生臭くないんですよね。そこが魅力だと思うんですけど、それだけに(描写の割に)リアリティに欠ける印象もあります。心に入り込んでくる小説というより、映画を見るような。それも、なぜか美しいフィルムを無音で見るかのような、言葉を尽くしているのに静寂を感じる、そんな感覚です。

そのファンタジックな感覚が、ラストシーンで突然現実に引き戻されるような、その落差にとてつもない魅力を感じた小説でした。

内容としては、ややミステリータッチの小説ですが、ミステリーを期待して読むとがっかりします。それは、犯人がかなり早い段階でわかってしまうことと、謎解きをメインにした語り口ではないからです。

森さんに限らず、優れた作家さんというのは、どうしてこうも、一人の人間の嫉妬や欲望といった、決して美しくない感情を生々しく描写しているにも関わらず、こんなに魅力的で美しい小説に仕上げる事が出来るのかなあ、といつも不思議に思います。

この小説に出てくる、ベトナム戦争を『ビューティフル』と表現する男性は、森さんのエッセイにも出てくる実在の男性がモデルですよね。(森さんが、その男性とバーに行って、彼が恍惚とした表情でベトナム戦争について語りだし、命の危険を感じたというエピソードがあります)そちらを先に読むと抵抗はない気がしますが、この小説を先に読むと、あまりに突拍子もない人物像に見えて、リアリティがない、と感じるかもしれません。


こんな人に読んで欲しい


嫉妬や欲望、そういった強い感情を時々もてあましている人。
そういった感情を嫌悪する人。


オススメ度★★★★☆

嵐が丘 (新潮文庫)←こちらで購入出来ます


あらすじ


ロックウッドはある屋敷を借りる事になり、その大家ヒースクリフの元に挨拶に行くが、その偏屈な人柄に不快感を覚える。悪天候のために泊めてもらった部屋で夢に見た幽霊『キャサリン』の話をすると、大家の態度は急変する。すすり泣くその姿に興味を持ったロックウッドは、かつて彼らをよく知る女中に屋敷にまつわる昔話をねだる。彼女は親子二代に渡る、長い物語を語り始める。

嵐が丘の屋敷の娘キャサリンと、屋敷の主人に拾われた孤児ヒースクリフ。二人は互いに強く惹かれ合う。しかし、キャサリンは名家の息子エドガーとの結婚を決め、失意のヒースクリフは屋敷を去る。3年後、莫大な富を得たヒースクリフは、キャサリンとエドガーの元に戻って来る。ヒースクリフはエドガーの妹に求婚するが、それは愛情からではなく復讐のためだった・・・

感想


とても不思議な小説。『復讐劇』とまとめてしまっても間違ってはいないし、それ以外に説明しようがないのですが、けれども『復讐劇』とはやっぱり違うと思います。

ヒースクリフは確かにエドガーやヒンドリーを憎んではいますし、結果的に彼らに復讐することにはなりますが、そのために戻って来たと言うよりは、ただキャサリンを求める一心で、嵐が丘に" 再度たどり着いた "だけなのだと思います。

二人は激しく愛し合ってはいますが、それはどこか身勝手で、気違いじみた恋です。なぜなら、彼らはお互いを違う人間として愛を育み合うのではなく、もう一人の自分として愛しているから。

「どうして愛しているかというと、ハンサムだからじゃなくてね、ネリー、あの子がわたし以上にわたしだからよ。人間の魂がなにで出来ていようと、ヒースクリフとわたしの魂はおなじもの。」(キャサリン)

プラトンの『饗宴』に、元々人間は二人の人間が背中合わせにくっついていたものを神が引き離したのだ、なんて話が出て来ます。(私の大好きな映画、『Hedwig and the Angry Inch』にもそれを元にしたエピソードがあります)

元々自分だったのに今は離れてしまっている存在、そういうものに出会ってしまったら人はきっと、激しい喜びとともに、もう元の形には戻れない絶望を知るでしょう。そしてその片割れを失ってしまったら、もはや自分以上の自分は求めようがないのですから、滅んで行く事にしか喜びを見いだせなくなってしまうのかもしれません。ヒースクリフのように。

読んでいる途中で少し辛くなってしまう小説でしたが、ラストシーンの風景には、心から安らぎを感じました。長い話ですが、きちんと最後まで読む事をおすすめします。


こんな人に読んで欲しい


運命の恋を信じている人、ステレオタイプな恋の幸せに憧れる人。


オススメ度★★★☆☆

流星の絆←こちらで購入できます


あらすじ


「父さんも母さんも殺されてる・・・」
功一、泰輔、静奈。仲の良い兄妹に突然訪れた両親の死。14年が過ぎ、事件は時効を迎えようとしていた。
そんな時、3人がひょんなことから詐欺をしかけようとした青年、行成の父親が、14年前に事件現場で泰輔が目撃した男だということが判明する。3人は復讐を計画するが、静奈は行成に恋心を抱いてしまう。そして行成もまた、静奈に惹かれていき・・・


感想


さくっと読めるミステリー。こういう、読後感がすっきりする本は大好きです。 実は東野氏の本を読むのはこれが初めてなんですが、ファンの方からすると物足りない部類に入るそうで。確かに謎解きと考えて読むと物足りない小説だとは思います。

でも、コテコテの恋愛小説や、頭ぐちゃぐちゃになるミステリーのちょうど中間にあって、そのバランスが私にとっては心地良かったです。

3兄弟の強固な絆が14年経っても変わらなかったこと。そして、行成のキュートな純粋さに、フィクションなんだけど、人って捨てたもんじゃないな、って思える小説でした。

ああ、アリアケのハヤシライスが食べたい。


こんな人に読んで欲しい


暗いミステリーは好きじゃない人、甘すぎる恋愛ストーリーに飽きている人。


オススメ度★★★★☆


肉体の学校 (ちくま文庫)←こちらで購入できます



あらすじ


離婚後、裕福で気ままな生活を楽しむ、妙子と信子と鈴子。月一の”年増園”は女同士のあけすけな話題でもちきり。3人で訪れたゲイバーで、妙子はバーテンダーの千吉に心奪われる。二人は恋に落ち、同棲生活を始めるのだけれど・・・


感想


 軽やかな小説。ここに出てくる女性達は誰も男性に期待も依存もしていなくて、でも真剣に恋にうつつを抜かしていて、それがどうしようもなく魅力的に私には思えます。


我を忘れてしまいそうな情熱の中で、或いは手痛い裏切りの中で、冷静さを失いそうになってもどこかで自分を客観視できる、そんな妙子にとても憧れます。それはもしかすると、単なる強がりなのかもしれないけれど。


強がることが出来なくなったら女は終わり。そんな風に思える小説で、悲しいことがあったときに読むと、とても元気が出てきます。


こんな人に読んで欲しい


手痛い恋の裏切りにあったことがある人、大人の恋に憧れている人、やせ我慢を美徳と思う人。


オススメ度★★★★☆

魍魎の匣←こちらで購入できます


あらすじ


美少女転落事件とは一見何も関わりのないように見えるバラバラ殺人。それらを結ぶのは『箱』。魍魎の匣にとり憑かれていく人々の狂気。妖怪シリーズ第2弾。


感想


妖怪シリーズは3作目までしか読んでいないのですが、私は今のところこれが一番好きです。登場人物それぞれの描写や、謎解きの鮮やかさ、エンディングに至るまで、無駄がない!という感じ。


猟奇的な事件を描いているのだけど、どの人物も私は嫌いになれないんです。人物描写が緻密なせいか、誰の気持ちにもちょっとだけ共感できる感じ。共感と言うとちょっと違うんですけど、何て言ったらいいのかなあ、想像力を刺激する文体なんですね要するに。秀逸。


こんな人に読んで欲しい


心の弱い方は読まないで下さい(笑)


オススメ度★★★★☆

渋谷ルシファー←こちらで購入できます


あらすじ


渋谷にあるバー、ルシファー。店のマスター、桜町の元に若い女性が訪れる。彼女、映子は桜町がかつて愛した女性の娘だった・・・


感想


kakaさんにオススメされて読んでみた一冊。kakaさんありがとう!


痛い、すごく痛い小説だと思った。久しぶりに胸がぎゅうっとなって、でもそれは涙が出るような切なさとは違う。なぜなら私はこの小説の登場人物に感情移入することは最後まで出来なかったからだ。


男性の書く小説って、女性である私には絶対入り込めない壁みたいなものを1つか2つ、必ず持っていると思う。


運命的で、でも何だかすごくリアルな小説。ブルースを聴きたくなること間違いなし、なんてありきたりな言葉は言いたくないのだけど。


こんな人に読んで欲しい


若気の至り的な恋をしたことがある人。


オススメ度★★★★☆

野生の風←こちらで購入できます


あらすじ


染織家の飛鳥と、カメラマン一馬との出会い、再会、そして恋。一馬に想いを寄せる飛鳥の友人・祥子との三角関係。運命と思われた愛は、祥子の妊娠によって思わぬ方向に進んでしまう。


感想


個人的に、この人の文体はあまり好きではありません。私は頭の中で音読しながら読むのですが(みんなそうなのかな)この人の文体はときどきリズムが乱れてひっかかることが多い。でも情景描写や人物の描き方は好きなので、ついつい読んじゃうんですが。


率直な感想を言えば、女性として祥子が大嫌い。一馬は避妊をちゃんとしろ!って感じなんですがそれではあんまりひどい感想なので以下にちゃんと書きます。


一馬が飛鳥を幸せに出来なかったのは、飛鳥以外を切り捨ててでも飛鳥を幸せにする強さ(それが本当の強さかは置いておいて)がなかっただけだと思います。 自分が悪者になりたくなかった、後味の悪い思いをしたくなかったから、彼は飛鳥より子供を選んだのだと。


でも、人道的にはそれが一番正しいのだと思います。そして、たぶん一馬のように、恋のために道を踏み外すことが出来ない人間の方が世の中には多くて、だから私も、ムカムカしながらも切ない気持ちを抱えてこの小説を読んでしまうんですね。


こんな人に読んで欲しい


不倫とか浮気とか、とんでもない!って思っちゃう人。


オススメ度★★☆☆☆

愛の領分←こちらで購入できます


あらすじ


仕立屋の淳蔵は、高瀬に招かれ、信州の故郷を35年ぶりに訪れる。かつて淳蔵が恋した、高瀬の妻の美保子との再会。年月と病が彼女を蝕み、変貌させていた。淳蔵は佳世と出会い、恋に落ちるが、過去の事実が二人の恋を秘密めいたものにしていく・・・


感想


 男性が描くにしては(失礼)あまりにも繊細な、密やかで秘めやかで、霧雨の中にいるようなしっとりとした描写、心情の揺れ動きの表現が美しい小説です。


かつて愛した女性の変貌や、佳世と高瀬の関係、一歩間違えれば昼メロになってしまうようなストーリーですが、緻密で淡々とした語り口のせいかいやらしくないです。ただ、ベッドシーンの描写はちょっとなあ、と思いました。下着の色とか趣味悪くないですか?


こんな人に読んでほしい


雨の日が嫌いじゃない人。


オススメ度★★★☆☆

 姑獲鳥の夏←こちらで購入できます


あらすじ


京極堂シリーズ第1弾。雑司ヶ谷の産婦人科に奇怪な噂が流れる。娘は20ヶ月も身籠ったままで、その夫は密室から煙のように消え、失踪したという。子供は夫の子なのか。夫は生きているのか死んでいるのか。


感想


京極堂シリーズに初めて挑戦してみました。最初の方で京極堂が延々語る講釈に辟易しちゃったんですけど、(能書きはいいから早く事件について話せ!とにかく現場に行って来い!とイライラした)きちんと伏線になってるんですね。


推理小説として読むには、犯人がすぐわかってしまうし、トリックも稚拙で面白くないと思います。語り部の関口くんが回り道しなければ10ページで終わってしまう作品だし(苦笑)倒叙ミステリーと思って読むと面白いかもしれません。


世界観と構成のうまさ、登場人物の魅力で私は一気に読んでしまい、読後の感想も「面白い本を久しぶりに読んだ!」としか言えないのですが、何が面白いのかと言われると実はあんまりよくわからなかったり・・・特にトリックのオチは、普段の私なら机ひっくりかえしてると思います。「これだけかい!!!」って。


誰かが『心理学ミステリー』って書いててなるほど、って思ったんですが、私が面白いって思った理由もその辺にあるのかもしれません。


こんな人に読んで欲しい


ミステリーマニアじゃない人。結果より過程を重んじる人。


オススメ度★★★★☆