朝晩涼しくなってきて、そろそろ夏じまいに取り掛かる頃ですね。

今年の夏も思い出がいっぱい。

数週間前のことですが、国立西洋美術館で観た松方コレクション展も良かったです。

 

国立西洋美術館の開館60周年を記念した「松方コレクション展」らしく、作品はもとより、時代の荒波に翻弄された松方コレクションの行方や国立西洋美術館設立までの経緯など、歴史を振り返り松方コレクションの成り立ちと現在に迫るもので、見応えがありました。

 

「松方コレクション」は、明治期の首相・松方正義の三男として生まれ、川崎造船初代社長に就任した松方幸次郎がヨーロッパ各地で収集した美術品のことです。社長就任時、松方は30歳だったことに、まず驚きましたが、船舶特需で得た収益を西洋美術につぎこみ、約10年間で1万点を超える購入だったとは!そんな豪快な収集を支えたのは、資金だけでなく、「日本人のために日本に美術館を作りたい」という松方の強い願いと構想があったからでした。

 

松方の美術品収集は欧米でも話題になるほど。ところが、金融恐慌で会社は経営危機となり、資金繰りのために作品が売却されたり、美術品を保管していたロンドンの倉庫火災による焼失、パリに残した作品は戦争中に敵国財産としてフランス政府に接収されたりと、コレクションは散逸。松方が思い描いた美術館の夢は消え失せるかと思われましたが、戦後、フランス政府から375点を寄贈返還(18点は返還拒否)され、保存・公開される場所として国立西洋美術館が1959年に設立。

 

フランス政府から返還拒否された作品の一部も展示されるのも見どころのひとつで

ファン・ゴッホの『アルルの寝室』やポール・ゴーギャンの『扇のある静物』を観ると、返還したくない気持ちがわかるような気がしてきます。

 

さらに注目なのが、モネの『睡蓮、柳の反映』。

松方はモネ本人から2点の『睡蓮』を購入しています。

1点は返還されて国立西洋美術館開館時からの収蔵品である『睡蓮』で、もう1点は長い間行方がわからなかったのですが、2016年にパリで発見され国立西洋美術館に寄贈されたのは大きな話題となり、皆さんもご存じかと思います。その幻の睡蓮の現存部分を修復した『睡蓮、柳の反映』が初公開。発見時は上半分が失われていたほどの傷みからの修復ですから、言葉が見つかりません。大作です。

 

『睡蓮、柳の反映』は、専門家による推定とAI技術によりデジタル推定復元されたものを最初に観ました。こちらだけ撮影OK。

 

こういったところにもAIの活用があるんですね。

 

名作を鑑賞し、松方コレクションの全貌にふれられる素晴らしい企画で、堪能しました。

音声ガイドナビゲーター 橋本さとしさんの語りも雰囲気に合っていて良かったです。

 

国立西洋美術館の展示室や前庭にあるロダンの彫刻も、松方コレクションに由来しています。

 

ロダン『地獄の門』

 

ロダン『カレーの市民』

 

 

ロダン『考える人』

 

松方コレクション展を観た後では、ロダンの彫刻も少し違って見えます。