佐野眞一氏の 『東電OL殺人事件』 というノンフィクションを読んでから、
なお更裁判員制度というものの不合理さについて考えさせられている。
事件の裏には、様々な要因がある。
それを、予め与えられる限られた情報だけで判断を下すなど所詮無理な話だ。
わたしが思う裁判員制度の一番の問題は、守秘義務だ。
過程で知り得た事柄は一生洩らしてはならぬ、というものだ。
ただし、裁判の傍聴者が知り得る範囲の事柄なら良し、とされている。
これは裏を返せば、傍聴者が知り得ぬ範囲で情報操作或いは情報の制限が可能だということだ。
限られた時間と情報の中で、素人である裁判員がどれだけの判断が下せるか疑問だ。
そして、伏せられた事実などは永久に葬られる可能性がある。
裁判員が関係するのは一審に限られるので、二審以降はまた別の問題ではある。
しかし、であるならば尚のこと、素人の参加などいらぬことなのではないのか?
裁判員選定過程から、実際に裁判に臨む間の日当やら宿泊費は、税金で賄われるのだ。
そのうえ、指示に従わない場合の罰則規定は厳しいものだ。
裁判員候補者名簿に名前が載り、『くじ』で図らずも当たってしまった場合、
「質問票」なるものが送られてくるらしい。
それに虚偽の記載をした場合は、50万以下の罰金に処されるか、30万以下の科料を課されるという。
また、出頭なき場合は、10万以下の科料だ。
そして、出廷義務のある時に、正当な理由なくして出廷しなかった場合も、10万以下の科料だ。
さて、肝心な確率であるが、裁判員候補者名簿に載ってしまうのが、全国平均で352人に1人だという。
実際に裁判員になってしまうのは、約5千人に1人だ。
これは、衆議院選挙の選挙権を持つ者の中から、公務員等適当でない人間が除かれてしまうからの
数字である。
宝くじに当たるより、相当近いところにそれが控えているのだ。