土日も色々と忙しく映画館に行けなかったのですが今やNetflixでポン・ジュノ監督のような才能溢れる監督の新作がNeflixのみで観れる世界になったのです。世界同時配信なので世界中の人々と同じタイミングで楽しめるわけです。『ワンダー・ウーマン』とか『スパイダーマン ホーム・カミング』が世界中で絶賛されていても置いてけぼりのこの日本でね。
というわけでポン・ジュノ監督の最新作『オクジャ/okja』をNetflixにて自宅で鑑賞したのであります。

あらすじ:
予告編はYoutubeで観てくださいな。

 

 

ルーシー・ミランド(ティルダ・スウィントン)が経営するミランド・コーポレーションは、安くて美味しい食肉を消費者に提供するために遺伝子組み換えをして作り出された豚を、世界中の農場に預けてその中でも一番に育った豚を世界一のスーパーピッグとして宣伝に利用することを記者達に発表する。
韓国の山奥でひっそりと暮らしていたミジャ(アン・ソヒョン)とスーパーピッグのオクジャだったが、ミランド社が立派に成長したオクジャを引き取りに来て離れ離れになってしまう。幼い時からオクジャと共に姉妹のように過ごしてきたミジャは、オクジャを取り戻すために山奥から飛び出すのだが…

感想:
とっても複雑な気持ちにさせられました。
ティルダ・スウィントンとジェイク・ギレンホールの怪演もあってコミカルに演出されておりますが、ミランド・コーポレーション社自体のしていることは消費者に遺伝子操作を伏せていること以外は、世界中の食料危機を救うという建前と企業としての営利目的を鑑みればオクジャを引き取りに来ることは、そもそも最初からの約束でしょと正当性があるのです。が、前半部にとても丁寧にミジャとオクジャの絆を見せつけられているので、頭では分かっていても感情としてはオクジャを救い出してあげたいと願わずにはいられないのです。途中からはポール・ダノ演じる動物解放団体達も絡んでくるのですが、彼等も彼等の目的の為にオクジャを利用する為に近づいて来ているのです。純粋な気持ちはミジャとオクジャの間にある愛だけなんです。この愛と絆が大人の事情に振り回される中でも、ミジャの強い意思とくじけない心が、本作の心臓と呼べるでしょう。彼女の存在があってこそ、とても複雑な気持ちになるのですから。
自分も動物は大好きですよ。でも美味しいお肉も大好きです。だからこそ目を背けたい現実でもあるのです食肉という問題は。消費者に安くて美味しい肉を提供して儲かりたいという企業。安くて美味しい肉を食べたいという消費者。動物を殺すことは許さないという動物解放団体。そこに悪者はいるのだろうか。そして人間に食べられる為だけに生まれてきた動物達の悲しい姿に、申し訳ない気持ちになるのです。肉食動物は、他の動物の命をいただいて生きさせて貰っているのだ。だからこそ食べる前にちゃんと「いただきます」と言いなさいと昔教わったなと思い出すのです。
強烈な皮肉とパンチが効いた快作でしたが、不快感を覚える方もいるだろうなと思いますのでご鑑賞はよく考えてからをお勧めします。
(点数:85点)

原題:OKJA
製作年度:2017年 
製作国:アメリカ/韓国
監督:ポン・ジュノ 
出演:ティルダ・スウィントン、ポール・ダノ、アン・ソヒョン、ピョン・ヒボン、スティーヴン・ユァン、リリー・コリンズ、ユン・ジェムン、シャーリー・ヘンダーソン、ダニエル・ヘンシュオール、デヴォン・ボスティック、チェ・ウシク、ジャンカルロ・エスポジート、ジェイク・ギレンホール