『クリスマス・キャロル』1970年版 | 銀幕と緑のピッチとインクの匂い

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映画は洋画、それも古い映画が大好き。本は外国文学。ドラマは洋物。サッカーは海外チームと代表の応援、という思いっきり偏った嗜好で、天の邪鬼に感想を語ります。但し、脱線話題多し。

 

 

 

SCROOGE

1970年イギリス映画 カラー  111分

監督 ロナルド・ニーム

出演 アルバート・フィニー アレック・ギネス ケネス・モア エディス・エバンス マイケル・メドウィン

 

お金持ちだが意地悪でケチな老人スクルージ(アルバート・フィニー)は、クリスマスが大嫌い。クリスマスの寄付は断り、ただ一人の甥の誘いも無下に断り、従業員のクラチットにも優しい顔など見せません。そんなスクルージの元に、仕事上のパートナーだったマーリ(アレック・ギネス)の幽霊が現れ、自分は死んでからさまよい歩き続けていることを語ります。スクルージもそうなりたくないなら、これから始まるたった一つのチャンスを掴めとマーリは忠告します。これからスクルージの元に3人の幽霊が現れある物を見せてくれるであろう、と。疑心暗鬼のスクルージの元に1番目の幽霊が現れます……。

 

チャールズ・ディケンズの有名なクリスマスストーリーを映画化したものです。ただの映画化ではなく、これは派手にミュージカル化しています。そこが良いんですね。スクルージは別として、思わず歌い出したくなる楽しいクリスマスと、誰もが思わず歌い出すミュージカルを同化したところが大変グッドです。

欲の塊の権化のように今でも言われるスクルージを演じるのは、アルバート・フィニーです。『いつも二人で』ではオードリーと夫婦役を演じ、『オリエント急行殺人事件』ではエルキュール・ポワロを演じたあの人。一癖も二癖もある俳優ですが、演技の巧さでは折り紙付き。頑固な老人スクルージを見事に演じています。ポワロにスクルージと年輩の役が続いていますが、実はこのアルバート・フィニー、まだそんなに年じゃないんですね。見事な老け役と言うべきでしょう。
共同経営者だったマーリの幽霊には、アレック・ギネス。何とまあ贅沢なキャストなんでしょう!スクルージの枕元に立つだけの幽霊がアレック・ギネス。そして、他に出てくる3人の幽霊にはケネス・モアやエディス・エバンスが扮しています。イギリス映画界の重鎮とも呼べる人たちの総出演。クリスマス用にちょっと作ってみた映画なんかじゃないことが、このキャストを見るだけで忍ばれます。

この話の中で好きなのは、スクルージの事務所で働くクラチットの家の出来事です。気の良いクラチットですが、上司があのスクルージでは家計はいつも火の車。やはり気だての良い奥さんと、可愛い子供たちとのささやかな愛の家庭を築いています。末っ子のティムは足が悪く体が弱いのですが、その代わりに天使のような心を授けられた子供です。そのティムが歌うシーンは、ちょっと涙もの・・・。「もしも願いがかなうなら・・・」、澄んだ歌声でその純真な思いが込められていてグッと来てしまうのです。

「Thank You Very Much」は未来の幽霊が見せてくれる場で歌われる歌。街の人々が、喜び溢れて街中を歌い踊ります。それにつられて、スクルージまで歌い踊り出してしまう・・・。雪の中で人々の服も暗い色調のものが多くて、50年代風の絢爛豪華、色とりどりとは違うのですが、この躍動感は古き佳きミュージカルを思い起こさせてなかなかのものです。

 

クリスマスにぴったりの映画です。是非、どうぞ!

 

トレイラーです。