『キス・ミー・ケイト』 | 銀幕と緑のピッチとインクの匂い

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映画は洋画、それも古い映画が大好き。本は外国文学。ドラマは洋物。サッカーは海外チームと代表の応援、という思いっきり偏った嗜好で、天の邪鬼に感想を語ります。但し、脱線話題多し。

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KISS ME KATE

1953年アメリカ映画MGM カラー 110分

監督 ジョージ・シドニー

出演 キャスリン・グレイソン ハワード・キール アン・ミラー トミー・ロール キーナン・ウィン ジェームズ・ホイットモア ボブ・フォッシー



ミュージカルのスター、フレッド(ハワード・キール)が率いる新作は、コール・ポーターの『キス・ミー・ケイト』だった。シェークスピアの『じゃじゃ馬馴らし』の翻案だった。フレッドの相手役は、別れた妻のリリー(キャスリン・グレイソン)。気性の激しいリリーは、フレッドを困らせる。そこに、リリーの妹役を演じるロイス(アン・ミラー)の恋人ビル(トミー・ロール)がフレッド名義で作った借金の取り立てに、ギャングの二人組(キーナン・ウィン、ジェームズ・ホイットモア)がやってきて、舞台も舞台裏も大騒ぎに……。



『ショウ・ボート』でも共演したMGMミュージカル大スターのキャスリン・グレイソンとハワード・キールが、再共演した話です。『ショウ・ボート』のしっとりした魅力とは反対に、スラップスティックコメディ。そこに、コール・ポーターの名曲と、アン・ミラーたちの迫力あるダンスが加わるのですから、面白くないはずがない。



まずは、冒頭で、グレイソンとキールが歌う「ソー・イン・ラブ」の美しい調べに、うっとりします。グレイソンのソプラノと、キールのテノールは、ミュージカルという枠に閉じ込めるのは、勿体ないくらいです。オペレッタと言ってもいい声。そして、歌われるコール・ポーターの「ソー・イン・ラブ」は、日本人には、お馴染みの曲だと思います。長年淀川長治さんが出演しておられた「日曜洋画劇場」のエンディングの曲です。映画好きだった方なら、何度も聞かれたことがあるでしょう。映画の余韻を楽しみながらも、「ああ~、また明日から、学校だ~」と、哀しさも混じった思いで、私も聞いていたものでした。



他にも「ウンダバー(素晴らしいという意味らしい)」などの名曲が聴けます。



フレッドとリリーは、離婚したものの、まだどこかに未練がある様子。特にリリーは、フレッドから贈られてきた花に、心をときめかします。ふたりがなんとなくいいムードになってきます。しかし、世の中、そう簡単にはいきません。ここから、ふたりの恋のさやあてが始まります。



準主役のアン・ミラーは、やはりMGMのスターですが、彼女はとにかくダンスが素晴らしいです。彼女ほど踊れる女優さんは、そうはいないのではないでしょうか。派手な役ですが、恋人のビルには一途で、ところが、このビルが、とんでもないことに、フレッドの名義で借金をしてしまうのです。



舞台で手一杯のところに、ギャングの借金取り立ての二人組がやってきて、フレッド危うし。



そして、舞台では、シェークスピアの『じゃじゃ馬馴らし』が上演されています。



と、面白さてんこ盛りで、次から次へと事件の起こるミュージカルなのです。



この映画は、あのボブ・フォッシーのデビュー作でもあります。何とも斬新な彼のダンスを見ると、その才能を感じます。



ギャング二人組、キーナン・ウィンとジェームズ・ホイットモアも歌って踊ります。強面のふたりの、踊りと歌は、上手ではありませんが、これが記憶に残る面白さなんです。もしかしたら、このふたりの歌と踊りが一番楽しいかも。



MGMが総力あげて作ったミュージカルですが、日本公開は遅れました(何故、私は行かなかったのかしら)。ミュージカル好きなら、是非一度は見て頂きたい作品です。キャサリン・グレイソンとハワード・キールの美声を聞くだけでも、意義があります。



トレイラーです。




「ソー・イン・ラブ」です。