『ダーティハリー』 | 銀幕と緑のピッチとインクの匂い

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映画は洋画、それも古い映画が大好き。本は外国文学。ドラマは洋物。サッカーは海外チームと代表の応援、という思いっきり偏った嗜好で、天の邪鬼に感想を語ります。但し、脱線話題多し。

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DIRTY HARRY
1971年アメリカ映画  カラー WB 103分
監督 ドン・シーゲル 
出演 クリント・イーストウッド ハリー・ガーディノ レニ・サントーニ アンディ・ロビンソン ジョン・ヴァーノン



 プールで泳ぐ女性をライフルで撃ち殺す無差別殺人が起きた。10万ドルを払わなければ、毎日一人ずつ殺すと、サンフランシスコ市に脅迫状が届く。犯人は、スコルピオ(さそり)(アンディ・ロビンソン)と名乗っていた。捜査を担当するのは、ハリー・キャラハン刑事(クリント・イーストウッド)。返事は、クロニクル紙に出せという要求である。市長(ジョン・ヴァーノン)は、金が出来るまで待て、と新聞で返信するが、二人目の犠牲者が出る。そして、スコルピオの犯行はどんどんエスカレートしていく。犯人は人質を獲り、ハリーが犯人の要求するお金を持っていくことになる。犯人は、ハリーを街中引き回す……。



 クリント・イーストウッドは、『ローハイド』で一度はスターになりました。それが続かず、イタリアに渡り、マカロニウエスタンで再びスターになりました。そして、再びアメリカへ。そして、遂に大スターの座を手に入れたのが、この映画です。70年代に流行った刑事映画では、この『ダーティハリー』と『フレンチ・コネクション』が双璧かと思います。


 ハリーはダーティハリーと呼ばれています。それは、何故か?見ているうちに、答えが出てきます。


 映画の初めの方で、偶然居合わせた場所で起きた銀行強盗を、ひとりで銃を撃ちまくって解決します。倒れている犯人のひとり。彼の銃はすぐそこ。手の届くところにあります。逡巡する犯人に、ハリーはマグナム44を向けて、「考えてるな。撃ったのは6発?まだ5発?無我夢中で俺も数えてない」と言い放ちます。格好良いシーンですよね。ハリー・キャラハンと言えば、マグナム44と、このセリフに尽きると思います。


 ハリーは、ブレスラー警部補(ハリー・ガーディノ)からの命令で、新しい相棒チコ・ゴンザレス(レニ・サントーニ)と組むことになります。前の相棒は入院中というところからも、ハリーの相棒は災難説が生まれるのは当然かも。チコにご加護あれ。


 ハリーが、犯人からの電話を受けるために、街中を走り回されるシーンがあります。今では、珍しくもないシーンですが、私が知る限りではこの映画が最初。トロリーに乗り込む駅の壁に、大きくカイルって落書きしてあるご愛嬌を見つけてしまいました。カイルは、イーストウッドの長男で、ミュージシャンとして、父親の映画にいくつも音楽を提供しています。この映画の頃は、かなり小さかったですね。

 
 特筆すべきは、犯人役のアンディ・ロビンソン。無差別殺人を起こすような男ですから、同情する余地などは全くないのですが、その立ち回りのうまいこと。見ていて、ぞっとするような男です。よくぞ、ここまで嫌な役に昇華させたものです。ダーティハリーでは、法で裁かれる範囲というのがいつも問題になりますが、この犯人は、巧みにそれを利用します。これぐらい、嫌な男はそうはいない。アンディ・ロビンソン、天晴!


 193cmの長身だからこそ映える、大きなマグナム44。ハリー・キャラハンという一世一代の当たり役に出会えたイーストウッドは幸せでした。その役を与えたドン・シーゲル監督には、イーストウッドが監督した『許されざる者』で謝辞を捧げています。面白い映画は、こうやって作るんだ、という見本でしょう。


 音楽は、ラロ・シフリン。撮影は、イーストウッド映画は、毎回この人ブルース・サーティース。脚本にノンクレジットでジョン・ミリアスが参加しています。



トレイラーです。