俺の大切なもの。




たとえば結婚指輪。こないだ失くした。どこで失くしたか分からない。探したけど出てこない。


でかい指輪だった。日常の、たとえば仕事の時などにはちょっと邪魔になっていた。


とはいえ、妻の友人のジュエリーメーカーに頼んで作ってもらったワンオフの貴重品だった。


仕事の途中にズボンのポケットに入れておいて、どこかの現場で落としたのだと思う。


まことに残念だ。


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たとえばチームの看板。


新居に引っ越しとなり、荷造りが始まったころ、俺は仕事で忙しくて、荷造りは遅々として進まなかった。


「いる洋服、いらない洋服はわからんから、自分で分けてや」


と妻に言われていたにもかかわらず、仕事仕事の毎日では、簡単なことではなかった。


「もう、自分で分けられんなら、あたしが独断で決めるからね」


ある日、大きな「いらない服」のゴミ袋が出来ていた。


俺は何も考えず、繊維ゴミの日の朝、えっこらえっこら重たい思いをしながらゴミ集積場に出した。


きっとあの中に入っていたんだな、俺の看板。





llllllll-俺の看板




大切なもの。


無くてもなんとか生きていけるが、あった方が心の余裕が持てるのは明白である。


人間本来無一物だけれど、持てる余裕があるのなら、持っていたほうがいい。