むかし、俺が店をやってたころ、水商売の女が、ソープの社長を連れて良く来てくれていた。
ある夜、女は社長にねだって買ってもらったデュポンのライターを自慢した。
タージ・マハールだった。


あれからずいぶん年月が流れた。
社長のソープはなくなり、女は長野に帰ったと、風の噂で聞いた。


あの時のデュポンは、今どこにあるか、夜空を見ながら酒を飲む夜更けに、ふと思うのだ。