連日の豪雨から脱した感があるのは、盛夏の頃から比べ、太陽の軌道が南に傾いたからだろう。陽の力は落ち、もはや大地は熱を保たず、上昇気流も穏やかだ。
夏の終焉は、過去の彼方の、とっくに終ってしまった縁を想わせ、一瞬の呼吸困難を誘発する。
体によくないぜ、と一人ごちて、それでもなお感傷という麻薬に溺れるのは、それが快感だからに決まっているのだ。
今さら、あの人に会いたいとか、あの時の続きを、なんて思わないが、思い出の数々を、ふとした弾みにむさぼるのは、9月の西陽、夏の終わりのサウダージ。
俺はどうやって更正すればいいのか、毎年この時期になると悩ましい。

さようなら。この夜の冷え込みは、いよいよ君が去ってしまったことを俺に知らせるよ。目の前にはオリオン座が居て、夜に蝉は鳴かなくなったし、遠くに貨物列車の乾いた音が聞こえる。君のふところで、俺は肌を焼く女どもを眺めながらビールでも飲むつもりだった。歳を重ねるごと、君と疎遠になる様な気がするけど、俺は君のことを家族だと思っているんだから、君も俺を家族だと思って、早く戻ってきてほしい。君が居ないと、頭がおかしくなりそうだ。でなければ俺が君に会いに行くよ。全てを投げうってでも。