君が将来困らない様にと、いろんなことを考えるが、俺に限らず、世の親というものは、自分の子供には困って欲しくないと願うのが一般的なところだろう。
だからいろんな習い事をさせるのが世の常となっている様だが、それを有りがたいと思う子供なんてのは一握りで、多くの子供がその不自由さから逃げ出したいと考えているのではないかと思うのは、俺くらいのものだろうか。
過去をさかのぼれば、俺は英会話教室に通っていたが、2年もすると、行くふりをして、近所の公園の木にのぼり、時間が過ぎるのを待っていたものだった。
木の上で、近所の空き地から拾ってきた、大人の男が読むような、いやらしい写真が満載の、ぼろぼろの雑誌を眺めて過ごしていた。
案の定、この歳になっても、まともな英会話などできやしない。
女の子には大いに興味がわいたけどな。
子供は勝手に自分の方向性を決める。親が決めてやらなくても、やりたいことは次々と出てくるものだ。
だから、俺は息子には、何かをやらせるのではなく、何に興味を持つかを深めてもらいたいと願っている。
子供でいられるうちは、子供のままでいいじゃないか。その暮らしの中で、いろんな人に出会ううち、いろんな事件にかかわるうち、方向性はおのずと見つかるものだ。何かを習わせるくらいなら、旅にでも出てもらった方がよっぽどいいと思うよ。