ケニアにホテルを所有する編集者、パリを拠点とする作家、華やかな表舞台で自己の世界を創り発信する二人が、深夜のラジオで対談している。
それを聞きながら俺は、営業車を転がし、転がして、終わりの見えない闇へ続く一本道を、つき進むでもなく進んで行く。
湿度を帯びた、もやっとしたヴェールに包まれた三日月が、西の空の低いところに浮かんで、俺のあとをついてくる。
月には、物心ついたころから、あれやこれやを語りかけてはきたが、はたして今夜、俺には何かしらのことを、語ってくれるか・・・語ってくれるとして、それは俺の内なる声だ、月の意思とは違う・・・そんな類いのセンチメントを、ゴッホも宮沢賢治も、感じたかもわからない。