いつかみな、


泡と消えるときがくる





俺の、青いベッチンの燕尾服は、どこへいったのだろう。


ポリエステル製の、白いパンタロンは?


エナメルの白いブーツも、大きなバックルの白いベルトも、


あれほど人々を楽しませた小道具の数々


語りの合間に叩いたインドネシアの太鼓や


踊りながらうならせた古いアコーデオン


ピアノを弾いて、歌の合間に吹くハモニカ


調子っぱずれの小さなギター


語りは?歌は?ダンスは?


享楽は必要だが、すべては一瞬のうたかた


オーディエンスは、もう、いない。


町の景色も人々も


つまり、行く川の流れは絶えずして、ってやつだ。


岸を離れた小船


水面に映える夕景


きっと俺は、どこかに帰るのだろうけれど


いつまでも、あのときの狂騒を想うのだ。



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