彼には、透明であることが必要だった。それは、地上の星(スター)として世間に認められるための最低条件だった。
それに、大きさにもこだわりがあった。彼は自身を、同属の中にあって、ひときわ特別な存在と考えていたからだ。
そのふたつの条件が、自分に合致していることを確認し、おそらく自分以上の存在は、この世にふたつと無いだろう、と言う確信を得られたので、ようやく彼は地上に姿を顕にした。
最初に彼を発見した山師は、彼があまりにも完璧で、完璧過ぎていて、馬鹿馬鹿しいくらいに完璧だったものだから、ガラスか何かのフェイクだと思ったに違いなかった。なので、持って帰るか否か、迷ったが、結局、手すさびの果て、家路途中の道端に、打ち棄った。
あるいは、事の重大さから、責任を放棄したのかも知れない。
そこへ無邪気な少女が通りかかり、彼を発見し、イギリスの至宝、カナリンの歴史がスタートした。
完璧な宝物は完璧過ぎる故、偽物にしか見えないのが難である。
さて、それから何百年を経た現代、遠い宇宙の果てに、まるごと全てがダイヤモンドで構成された星が発見された。その星では、ダイヤモンドは土くれほどの価値しかない。
ひょっとしたら、地球だって、コアの部分がダイヤモンドの固まりかもわからない。
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